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第109話
シンガポール ハイ 5
空港から黄緑のライトアップされた道路を走る。そのうち、高層のホテルが立ち並ぶ通りを走っているのはわかった。
眠気が半分の俺の頭には、派手な都市なんだな、という感想しか出てこないけど。
俊の言った通り車は20分ほどで車寄せのある建物に着いた。
「 着きました。お疲れ様でした 」
ここがさっき話していたコンドミニアムなんだ。
車から降りるとモアっとした空港と同じ空気と、かすかに潮の香りがした。
そして、しっかりと蘭の香りがする。
「 海のそばなんだ 」
「 ええ、コーブですから 」
スーツケースを下ろしながら運転手の人が答えてくれる。
「 日本語、お上手ですね 」
「 はい、日本の会社の方々も乗ってくださる方が多いので 」
朝霞さんがトランクを確認して、オッケーのサインを出すと、
「 それでは良い旅を 」
と車は静かに元来た道を帰っていった。
真夜中なのにコンシェルジュが応対している。
荷物を運んでくれるらしい。
ニッコリとする笑顔が柔らかくて、
ああ、アジアなんだ。
複雑な構造だからエレベーターで3階くらい上がったのかな?
ガーデンとガーデンの間に通路があってそこを案内されて行くと、大きな両開きのドアの玄関に着いた。
俊がドアを開けると、広いホールに荷物が多い運び込まれた。
ホールの前は椰子の木の揺れる音と、花の香りとが混じり合って、いかにも南国。
照明がつくと、
目の前に広がる光景に圧倒された。
ソファなんていくつあるんだろう、
タイル?石貼り?とにかくベージュの床がどこまでも広がっている。間接照明で美しく描き出される壁の装飾。
所々に置かれた絨毯が疲れた脚に優しい。
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