108 / 207

第109話

シンガポール ハイ 5 空港から黄緑のライトアップされた道路を走る。そのうち、高層のホテルが立ち並ぶ通りを走っているのはわかった。 眠気が半分の俺の頭には、派手な都市なんだな、という感想しか出てこないけど。 俊の言った通り車は20分ほどで車寄せのある建物に着いた。 「 着きました。お疲れ様でした 」 ここがさっき話していたコンドミニアムなんだ。 車から降りるとモアっとした空港と同じ空気と、かすかに潮の香りがした。 そして、しっかりと蘭の香りがする。 「 海のそばなんだ 」 「 ええ、コーブですから 」 スーツケースを下ろしながら運転手の人が答えてくれる。 「 日本語、お上手ですね 」 「 はい、日本の会社の方々も乗ってくださる方が多いので 」 朝霞さんがトランクを確認して、オッケーのサインを出すと、 「 それでは良い旅を 」 と車は静かに元来た道を帰っていった。 真夜中なのにコンシェルジュが応対している。 荷物を運んでくれるらしい。 ニッコリとする笑顔が柔らかくて、 ああ、アジアなんだ。 複雑な構造だからエレベーターで3階くらい上がったのかな? ガーデンとガーデンの間に通路があってそこを案内されて行くと、大きな両開きのドアの玄関に着いた。 俊がドアを開けると、広いホールに荷物が多い運び込まれた。 ホールの前は椰子の木の揺れる音と、花の香りとが混じり合って、いかにも南国。 照明がつくと、 目の前に広がる光景に圧倒された。 ソファなんていくつあるんだろう、 タイル?石貼り?とにかくベージュの床がどこまでも広がっている。間接照明で美しく描き出される壁の装飾。 所々に置かれた絨毯が疲れた脚に優しい。

ともだちにシェアしよう!