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第114話

シンガポール ハイ 10 コンシェルジュに荷物を預けて身軽になった俺たちは、タクシーで地下鉄のハーバーフロント駅に行き地下鉄に乗る。 「 日本に似ていて行動しやすそう」 「 そう、地下鉄使うのは楽です。タクシーもよく捕まるし旅行者には優しい街ですよ。やっちゃならないこともありますがノースモーカーで今の日本人ならまず大丈夫でしょう。ただし食べ歩きや飲み歩きには気をつけないといけないですが 」 そんなに混んでない車内、清潔で本当に違和感は無い。乗換駅は流石に混んでいた。 20分足らずで、目的のオーチャード駅。通りに出ると、まるで新宿か銀座通りのような人混み。観光国だけあって色々な皮膚の色をした人が歩いている。 「 迷いますよ 」 と周りばかり見ている俺に俊が声をかける。 杏果と朝霞さんは数歩先をなにか楽しそうに話しながら歩いている。杏果は俺のこと全然眼中にないみたいだな。 「 どこに行くの? 」 「 マンダリンホテルの中のレストランですよ 」 「 チキンライスって庶民の食べ物かと思ってた 」 「 ええ、誰でも食べられます。値段がそれぞれなだけ 」 軽くウインクしながら冗談めかしく語るこいつは、なんてキザなやつ、でもそれが此の国では合ってる。 みんながみんな、背を伸ばし大ぶりな手つきで話しながら歩いている。 たしかに日本じゃない。 しばらく大きな街路樹の植え込みのあるオーチャードロードの人混みをよけながら歩くとマンダリン オーチャード ホテルにたどり着く。 「有名というか、日本企業の人もよくきますよね、ここチャターボックス 」 いつのまにか朝霞さんは杏果の肩にしっかりと腕を回している。思わず凝視すると 「 あー、杏果ちゃんけっこう人とぶつかりそうになるので、安全のために 」 「 なんか歩くスピードも感覚も違うんだもの 」 言い訳をする杏果。 「 仲の良い親子に見えません? 」 と笑いながら朝霞さんが言うのに。 俊が呆れたように返す。 「 流石に親子には見えないけどな 」 「 本当の親でもしたことないし 」 とオレが追加すると、杏果が 「 ほんと、ヒロシさんとは手も握ったことがないような気がする 」 「 へードライなんだ、ベッドで、 い、痛っ!」 来たエレベーターに乗りながら、 思いっきり俊の向う脛を蹴飛ばした。 シンガポール ハイ 11 マンダリン オーチャード ホテルの5階にある、 チャターボックス 「 あっ○風堂、日本のお店があるね 」 「 日本より高級なイメージだね、この店でラーメン食べたことある? 」 「 江ノ島に行った時に食べたよ 」 「 泳ぎに行ったの?水着姿見てみたいね、いっしょに泳ごう 」 「 え?泳げるの? 」 「 ホテルにはすごいプールがあるよ 」 朝霞さんと杏果の会話は永遠に続きそうだ。 カジュアルな雰囲気のチャターボックス。席に案内され半円のソファテーブルに着く。 さっそくメニューを開いても、 食べるものは 「 チキンライス!」 「 それとビールね 」 と注文はさっさと決まる。 「 ここは、手頃に食べる店とはまた違います。でも、街中で食べる機会はあるので比べてみると良いと思いますよ 」 杏果はもう楽しみで仕方ないらしい。 機内からこっち、せっせと写真を撮っては誰かに送っている。 送るたびに朝霞さんはこちらに興味を向けようと熱心に話しかけてるのも、微妙だ…… タイガービール来て乾杯なんてやってると、写真を撮るかと、ウエイターが言ってくる、慣れてるな。 ついにチキンライスが来た。 思ってたのと全然違うスタイルで。 蒸し鶏かと思うほど綺麗な色をしている鶏肉と、ソースが3種類、そしてスープとほのかに黄色いライス。 「 !チキンライスっね! 智くんの言った通り 」 杏果が笑顔で朝霞さんに?え?智くん? 「 ソースは? 」 と俊が尋ねると、丁寧にウエイターは英語で答える。これなら俺にもわかる。

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