123 / 207

第124話

シンガポール ハイ 21 俺の方を見ながら、なにやらまだ言い合っていた2人だが、 やがて和解したらしいボブさんとアンドレイがプールの反対側にあるジャグジーに行ったようだ。 なんで言い争っていたのか疑問だけど、まぁ仲が治ったんだから良かった。 仲良く歩く後ろ姿が友達にしては近いのは気になるかな。 もしかして、 友達って、そっちの方なのかな。 俊とこんな関係になってから、そっち系の人との出会いが増えた気がする。 「 ヒロシさん、なんかまた飲む? 」 と杏果が聞いてくる声に振り向くと、こっちはこっちでプールから上がってきた濡れた身体で、 わざわざ同じデッキチェアに並んで座ってるカップルがいた。 まぁ、旅にでるとそんな気分になるんだろうな。 そんな気分にって、 杏果と朝霞さんがそんな気分になったらどうする?俺? 「 あ、ちょうどいい、割井さんも来たからスパークリング1本頼みましょう 」 と朝霞さんがボーイを呼んだ。 俊が"やはり"そんな気分"の俺の隣に腰をかけて先ほどの彼女らの顛末を軽く報告する。 観光案内までさせられそうになったと、苦笑いする俊。 同じホテルでまた会うだろうなとちょっとモヤモヤしたけど、 ちょうど運ばれたスパークリングで お疲れ様!っと乾杯をする。 「 プールには入りました? 」 「 うーん、まだ 」 と答えると、空のグラスをテーブルに置いて 「 行きましょう 」 と俺を誘う。 でも上脱げないじゃん、と少し上目遣いでむくれた俺は、 「 そのまま入っても大丈夫、そのラッシュガードなら怒られませんから 」 とプールサイドまで俊に手を引っ張られる。 意外と冷たい水にブルっとしながら身体を沈める。 しばらく水の重みを楽しんでから、プールの水が落水している際まで泳いでいく。 その先にシンガポールのビル群が見える絶景を眺めながら、 改めて来て良かったとしみじみ思う。 横に寄ってきた俊。 「 幸せ、ですね。 やっと恋人らしいことができた 」 耳元で囁くように伝えてくる男の言葉に、蕩ける気持ちと募る想いを隠す自分がもどかしい。 たゆらう水の中、 俊の太ももに指を滑らせ、 硬い張り詰めたその肌を辿り、 愛してると指先で告げるのが精一杯だった。

ともだちにシェアしよう!