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第124話
シンガポール ハイ 21
俺の方を見ながら、なにやらまだ言い合っていた2人だが、
やがて和解したらしいボブさんとアンドレイがプールの反対側にあるジャグジーに行ったようだ。
なんで言い争っていたのか疑問だけど、まぁ仲が治ったんだから良かった。
仲良く歩く後ろ姿が友達にしては近いのは気になるかな。
もしかして、
友達って、そっちの方なのかな。
俊とこんな関係になってから、そっち系の人との出会いが増えた気がする。
「 ヒロシさん、なんかまた飲む? 」
と杏果が聞いてくる声に振り向くと、こっちはこっちでプールから上がってきた濡れた身体で、
わざわざ同じデッキチェアに並んで座ってるカップルがいた。
まぁ、旅にでるとそんな気分になるんだろうな。
そんな気分にって、 杏果と朝霞さんがそんな気分になったらどうする?俺?
「 あ、ちょうどいい、割井さんも来たからスパークリング1本頼みましょう 」
と朝霞さんがボーイを呼んだ。
俊が"やはり"そんな気分"の俺の隣に腰をかけて先ほどの彼女らの顛末を軽く報告する。
観光案内までさせられそうになったと、苦笑いする俊。
同じホテルでまた会うだろうなとちょっとモヤモヤしたけど、
ちょうど運ばれたスパークリングで
お疲れ様!っと乾杯をする。
「 プールには入りました? 」
「 うーん、まだ 」
と答えると、空のグラスをテーブルに置いて
「 行きましょう 」
と俺を誘う。
でも上脱げないじゃん、と少し上目遣いでむくれた俺は、
「 そのまま入っても大丈夫、そのラッシュガードなら怒られませんから 」
とプールサイドまで俊に手を引っ張られる。
意外と冷たい水にブルっとしながら身体を沈める。
しばらく水の重みを楽しんでから、プールの水が落水している際まで泳いでいく。
その先にシンガポールのビル群が見える絶景を眺めながら、
改めて来て良かったとしみじみ思う。
横に寄ってきた俊。
「 幸せ、ですね。
やっと恋人らしいことができた 」
耳元で囁くように伝えてくる男の言葉に、蕩ける気持ちと募る想いを隠す自分がもどかしい。
たゆらう水の中、
俊の太ももに指を滑らせ、
硬い張り詰めたその肌を辿り、
愛してると指先で告げるのが精一杯だった。
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