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第127話

シンガポール ハイ 24 止める間もなく杏果はボブさんの席へ寄って行く。 こんなところでボブさんと隣にいるアンドレイの姿を俊に見られたら! プールでの水着の事も話していないし、でも、あれは別に気のせいかもしれなかったし、でもなんか嫌な予感がしてきた…… ボブさんたちも杏果に気がつき手を上げて挨拶を返している。 アンドレイの目線がオレを捉えた。 じっと俺の方を見やる視線が肌にまとわりついて煩わしいのはどうしてだろう。どうしてかその場から動けない。 あちらの席に近づくでもなく、自分たちの席に戻るでもなく、中途半端に立っている俺の周りを気にもせず店のスタッフが大きなクラブの座った皿をかかげながら歩く。 背後から俊の声がした。 俺の背中に手を軽く当てると 「 誰ですか? 」 と杏果のいる方に目を向ける。 「 ボブとその知り合いのアンドレイですよ!プールで知り合ったんですが、 あー杏果ちゃん、あんなに懐いちゃって、やばいな~ 」 と軽く笑いながら朝霞さんがボブさんたちの席に寄っていった。 「 アンドレイ?アジア系?クオーターかな、 ボブさんとやらの……知り合い?随分雰囲気も歳も、それに、、、違いますねぇ 」 「 え? 」 「 いや、なんでもありません。会計済んだので店の表で待ってましょう 」 背中に当てた手に押され混雑した店から外の川沿いの通りに出ると、ホッと息がつけた。 目の前には川沿いの美しい夜景が流れている。 「 帰りはリバークルーズが良いですね 」 「 船に乗るの? 」 「 ええ、川から見る夜景は徒歩やタクシーではなかなか見られないアングルからの眺めだし、船の上は意外と涼しいので気持ちも良いですよ。この辺から始まるおもちゃ箱のような街並みから高いビルの夜景まで、ひと味違ったシンガポールの夜を楽しめる。 今から乗船すればホテルのレーザーショーにも間に合いそうですね」 「 レーザーショー? なんかのお祭りなの? 」 「 いいえ、毎日やってます。派手ですよ。一流のホテルがそういうことをするのも観光重点の国らしいですね。 お、朝霞たち、出てきたかな?」 ところがどういうわけか、出てきた朝霞さんと杏果はボブさんとアンドレイと一緒だった。

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