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第140話
シンガポール ハイ 37
「 お土産はカヤジャム、有名なんだって朝霞さんが言ってた。とラッフルズの紅茶と、あとは?何にする?」
反応が遅い俺の顔を心配げに覗き込む。それから俊と2人の女怪の方を見やると。
「 普通のあいさつしてるだけだよ、心配しないで 」
え?杏果にまで分かるほど?俺、変?
朝霞さんが後ろから
「 ヒロシさん、お土産見ます?
杏果ちゃん、随分買い込んでますよ 」
と楽しそうに笑ってる。
朝霞さんにお土産を渡す人を羅列している杏果。最後に名前を詰まって誤魔化していたのはだれなんだろうな。
俺も少し気分が良くなった。
買うものは杏果に任せると言って俺はギフトショップの外に出た。
思った通り俊も出てきた。でも後ろには女性2人がつきまとったまま。
思いっきり笑顔を浮かべて、
『 こちらの方達は? 』
と聞いてやると、
『 ミス リードとミセス ワトスン 』
とやや乱暴に紹介される。
俺も笑顔を貼り付けたまま、
『 三枝です。よろしく 』
と挨拶をする。
2人が俊に順番に話しかけるので、俊は俺に色々聞けず珍しく分かるほどイラついてる。
『 タクシー待ってるから 』
とその時アンドレイがやってきた。
アンドレイは俊と2人の女性に気がつくと、すかさず声をかける。
『 これからアラブストリートを案内するんですが、ご一緒にどうですか? 』
ギョッとする俺と俊の顔を可笑しそうに見ながら、ハンサムなアンドレイの誘いに早速同意した2人の女性とお喋りを始めた。
「 どういうつもりなんだ」
と顔をしかめる俊。
「 だいたいアラブ街なら俺でも朝霞でも何回か行ってるから案内なんかいらないんだ 」
俊の機嫌が最高潮に悪い。
なんかゾクゾクする様な最悪な展開になってきた。
杏果と朝霞さんも急に増えた同行者に驚いた様子だけと、和かにあいさつに応じている。
女性達が俊から離れないので、俊が前で女性2人が後ろの席。俺はアンドレイと杏果でもう1台の後ろの席、身体の大きい朝霞さんは前に座る。
タクシー2台はアラブストリートへ向かう。車内で隣に座るアンドレイが俺の腿に指をずっと絡めたままタッチする様に触ってくる。ムズムズしてくるし身体が熱くなってきた。まずいと思い手で払うのに纏わり付いた指を離そうとしない。更に困ったことは。
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