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第145話

シンガポール ハイ 42 そのまま少しの間うたた寝してしまったらしい。 俺のそばで俊が電話でやり取りしてる声が聞こえてきた。 「 まだ寝てるから、わからないけど先に…… 」 おれが寝返りを打って俊の方を見ると 「 あっ、起きた? 」 と俺の方に手を伸ばす。その手を捕まえて口元に運びキスをすると、 ニコリと笑いながら 「 ハラへったよ、今から行くから 」 と通話を終えた。 誰?と聞くまでもないけど 「 誰? 」 と聞くと 「 朝霞が杏果ちゃんと腹が減ってたまらないからって言ってきた。 そりゃそうだよな、もう9時だから」 「 そう、そんな時間 」 軽くあくびをしたらお腹がなった。 「 ヒロもだな、シャワー浴びてプールへあがろう 」 「 プール泳ぐの? 」 「プールサイドにバーがある、あそこなら食べ物も出るから、行こう」 軽くシャワーを浴びてプール階に上がると、プールサイドのバーで朝霞さんと杏果が何品か注文した料理の前で待っていた。 テーブルの上は腹が減りましたをそのまま表したようだ。 コーンのような生地が円筒形になって 中にフィリングが詰まってる不思議なスタンド、 フレンチフライ、 ベジタブルロール、巻き寿司か? シーザーサラダ、 焼いたパンのチーズとハムのサンド。 杏果の前にはピンク色のアイス。 それに、 ワインがクーラーに入ってる。 「 まだ飲むの? 」 「 当然 」 と俊と朝霞さんの声が出揃ったのには 俺と杏果で爆笑した。 「 あ、ヒロシさん、そんな風に笑うんですね 」 と朝霞さんに言われて、こんなお腹を抱えて笑うのは久しぶりだなと自分でも思った。 早速冷えたワインをグラスに注がれ、以外に乾いてる喉を、潤すと、地上200メートルの夜の風が心地よく吹いてくる。 周りの夜景にしばし眼を奪われながら、今回の旅が俺に何かをもたらした、そんな感じがしてきた。 気持ちの中は満足でいっぱいのこんな旅なら、たまにはいいかもしれない。 「出不精のヒロシさんにはいい経験だったでしょ 」 と俊が聞き捨てならないことを言う。 「 なんだよ、出不精って 」 「 あ、わかる 」 ワインにアイスを舐めながら杏果が口を挟む。

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