148 / 207
第149話
ロックの日に
あの頃の気持ちに (ジュンヤ) その3
しばらくジュンヤの咳が収まるのを待つ。片腕を口にあて深い呼吸を何度かすると、
「 バカじゃない!
なんだよ、それ……
会うの10年ぶりだよ、それに俺は2年前に日本に来てる。その間なんの接触もなくて、どうしてそんなことを 」
「 お前が帰ってきてるのを知らなかったんだ。先月割井君から偶然お前の名前が出てきて…… 」
「 それまで調べもしなかったんだろ?どこにいるかなんて 」
「 サックスを吹くのを仕事にしたのは知らなかった……権藤さんの後を継ぐのだとばかり 」
「 ああ、継いでるよ!両立させて貰ってる。本当の父親ってこんなもんかなって思うほど、気にかけて貰ってるよ。
それなのにあんたと一緒に住むなんて言えるわけないだろ、
その前になんであんたと住まなきゃならない 」
「 俺が、俺が住みたいんだ、前のように一緒に 」
「 俺はいやだね、あん時の針のむしろみたいな生活、二度と送りたくない。
帰る、店にも二度と顔を出さないでくれ」
そういうとジュンヤは2枚のお札を机に置いて、店を出ていった。
まぁ断られることはわかっていたから、俺もそのあとは追わずに、残りの飲み物を飲み干した。
どうするかな、店にも来るなって言われたが、本心だろうか?
俺が知ろうとしなかったのは、お前がアメリカで幸せになると思ってたからだ。アメリカで恋人と暮らしていくんだと思っていた。日本に帰ってきてるのなら、
そんな遠慮はもうしない。
まずまぁ菅山にでも明日連絡して取ってみよう
あいつと話せばなにか良い案が出て来るかもしれない。
ズボンのポケットに突っ込んでいたクルマの鍵を持ち、ウエイターを呼んで会計を終えた俺は、なにか嬉しい事でも思いついた貌をしていたのか。
ありがとうございましたというウエイターの表情が訝しげだった。
そうだよ、楽しいよ、どうしてやろうかな。今ならなんでも出来る気がしてきた。
ジュンヤのことはきちんとしなければならない、
それが俺の最後の
One important thing、
二度と同じで過ちは繰り返さない。
もう俺には時間もないしな。
ともだちにシェアしよう!