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第150話

4ロックの日に あの頃の気持ちに (ジュンヤ) その4 ベッドの端にだれかが立っている。 過ぎる酒も飲んでいたし、眠気でうつらうつらしていた俺はあまり気も止めずにそのままにしていたら、 静かな吐息を吐きながらベッドの上に体重がかかったのを感じた。 まさか?と思ったが、離婚調停中にそれはないなと思い直し、 気のせいか酔ってるせいにして、毛布をかぶり直した。 音のした方に背を向けてやってきた睡魔に身を任せようとしたのはどのくらい経った時だったか。 毛布をめくり俺の背中に寄り添ってきた体躯。腹に回された腕、首筋に触れた髪。 少し冷たい身体。 俺の頭の中には一人の姿しか浮かんでこなかった。 ここは五反田の自宅だ。彼女のいる麻布のマンションじゃない。 ジュンヤか…… 中学の2年生になってから、時々何か思いつめたような気配を漂わせ、俺とは目を合わさなかったジュンヤが、 冬の足音を聞いた頃、不思議な表情で、 いや違うな。 青年になれきらない少年独特の危うい色気、 俺たちみたいな、体躯から考えからすっかり大人に浸ってる奴らから見たら、眩しいほどの青さがそこにはあった。 まして、俺を見る目は浮かされたような眼差しで、喋りかけてもこないのが余計にそそられるような、そんな身体と貌をジュンヤはしていた。 だから気がつかないふりをした。 声をかければ何かが傾くような気がしていたから。 再婚した母親のほかに女を作ったような男がその義理の息子からどんな目で見られるか、そんなことの方を気にしたようなフリをした。 そう、だからこの俺の寝床に後ろから入ってきたのがジュンヤだということにはすぐ気がついた。 背が伸びたな。顔を首筋につけても、足が俺の膝までは来る。 線の細い子だったから年より幼く扱っていたが、男の寝床に入るような大胆な事をするようになっていたんだ。 震えてると思いきや、ゆっくりと腕を回した腹の上を細く柔らかな指がはう。 どうするつもりだ? 息を殺して次の動きを待つ。 なぜ?とは思わなかった。 おずおずと俺の腹をさまよっていた指が動きを止めたのは、 俺の胸板ののところだった。 筋肉を確かめるようにさざめく指先。

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