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第157話
あの頃の気持ちに (ジュンヤ) その11
まぁ、冷蔵庫にストックがなくても近くのイタ飯屋からケータリングでも取ればいいかと思い直した。
まだ幼くて俺の後を付いて歩いていた頃よりは幾分かは尖ったが寝ている面は昔の面影を濃く残している。見つめても瞼の下の剣呑な瞳は帰ってこない、すっかり寝入っているようだ。俺はしばらくこのままでと家に帰る道を遠回りした。
途中、何度か寝返りを打ち起きる気配があったが瞼の上に手のひらを置いてやると安堵したかのようにまた眠りの世界に戻っていった。変わらない、昔から起きそうになるとそうしてやったことを思い出した。
このまま父親の気持ちがオレの心を分捕れば、この先は夕飯でも一緒に食べて帰すだけなんだが……
寝ているジュンヤを横にして、
この後に及びまだ迷う自分がいた。
駐車場への地下への通路を降りるとジュンヤがそのタイヤの鳴る音で目を覚ましたようだった。
首をこすりながら
「 ここは? 」と問う声は少しかすれ気味で、
「 俺の家だ 」
と応えると、
「 どこ? 」とまた聞いてくる。
「 五反田島津山の俺の家 」
「 借りてるの? 」
「 いや違う 」
ふーんと言いながら身体を起こすと少し眉を顰めた。
「 痛むのか? 」
と問うと
「 少しね 」と答える。
「 素直だな 」
「 気持ち悪い? 」
「 いや、嬉しい 」
というと盛大にしかめっ面をしてみせた。
車から降り、ドアを開け降りるように促すと、やはり素直に降りてくれた。
地下のエレベーターに乗り込み11階のパネルにタッチする。
着いた11階のフロアーは一つのフロアに2戸しか住居がないメゾネットタイプ。右と左の端にそれぞれの玄関がある。中廊下になっていて絨毯が敷き詰めてあるので音も響かないし快適なほうだろう。
玄関のドアを開けジュンヤを先に通すと、入っところから廊下の先ガラスの室内扉越しに島津山から見下ろする景色に日が落ちるところだった。
靴を脱ぐマンションではないのでそのまま外靴で絨毯の床を進むのにアメリカで過ごしてきたジュンヤは何の違和感もないようだった。
コートを脱ぎながらジュンヤは
リビングの大きなワイドの窓に近づく。
冷たい窓ガラスに手をつき夕陽をみる後ろ姿は頼りげない。
後ろからきつく抱きしめてやりたい……
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