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第160話
ロックの日に
あの頃の気持ちに (ジュンヤ) その14
「 早く 」
と声が聞こえる、
「 おう、今行く 」
楽しむ気あるんだなと思いながら、俺は気持ちをきっぱりと変えた。
俺の深い藍色のバスローブを着たジュンヤはダイニングではなくリビングのソファーに片膝を乗せて座っている。
前こそきっちり紐で結んであるが、脚はふくらはぎから膝の上がやや見える姿勢でソファの背中にもたれている。
ケータリングの箱をダイニングテーブルに置きながら、
「 だるいのか? 」
と話しかけると曖昧に首を振り、
「 なんか少しフラフラするけど、寝すぎのせいだろ 」
と相変わらず答えを逸らしたように軽く返して来る。
ダイニングテーブルの上のクーラーに入ったシャンパンはもう見つけたらしい。
「 それ、開けるんだろ。のどが渇いてるから早く開けよう 」
「 大丈夫か?フラフラしてるならやめるか? 」
「 大丈夫だから、こっち持ってきて、俺抜くのうまいんだ 」
「 こういうのは家のホストが抜いて振る舞うと相場が決まってるぞ 」
「 まったく、そんなこといいじゃない、俺今、シャンパン抜きたい気分 」
と言って立ち上がるとテーブルの上のクーラーからボトルを持ち上げる。
俺は言うことをきかない猫の相手をしている気分だ。
ホンモノの猫に興味はないが、こういう猫なら大好物だ。
ボトルを持ってソファーに戻るジュンヤ、しなった弓の様な背中のライン、しっかりとした腰骨がバスローブの紐の下で布越しに姿を見せる。
膝下のふくらはぎは適度な筋肉と滑らかな肌をあらわにし、足首は細くも太くもない。
だがやけに綺麗なくっきりとしたくるぶしをしている。
そんなことにぞくっとしたのは俺のどこだ?
元のソファーの位置にボトルを持ったままどさりと座ると、
「 ねぇ、クロス 」
と俺に手を伸ばして抜くときのクロスを要求する。
テーブルの上からクロスを投げてやると、片手でキャッチし
「 ったく、乱暴だな 」
とか言いながらシャンパンの栓を抜くことに集中したようだった。
磨いたフルートグラスを持って行くと、
ポンッとシャンパンを開けた音がした。
冷やし過ぎかも知らないとちょいと心配していたのだが……
グラスに注ぐジュンヤの手並みは鮮やかで、それも自慢げに飲めとばかりに顎を上げてみせた。
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