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彼の想い

「電話かかって来ちゃった」と西くんが席を外し、北山くんと2人になる。これ幸いと私は気になっていた事を北山くんに聞いてみた。 「ね、北山くんは本当にいいの? 同級生と3人でスルとか気まずくない?」 「大丈夫です。西がこの話してたのも人伝えに聞いて立候補したんです。南さんが本当は西の事あしらいたくて出した条件だなってのは解ったんですけど…こんなチャンス逃せないので、感謝してる位です。実は、南さんが腐女子なら応援してもらえるかなって下心つきです」  ちら、と見られ笑いながら言われる。やっぱり腐女子はバレてますよね。そうですよね~。  と、いうことは… 「やっぱり、西くんの事好きなんだ?」  ずばりと聞くと、照れ臭そうに答える。 「そうです。本当は諦めてたんですけど、話聞いてたらもしかしてって思って…」  苦笑して北川くんが語り出した。  西とは高校の同級生だ。出会った頃の西は今と同じ位の身長があった俺より20センチ程背が低くて、顔も今より幼くて可愛いかった。見た目だけじゃないちょいおバカだけど人懐こくて明るい性格のせいもあって、すぐに同学年だけじゃなく先輩からも注目された。人気は女子だけに留まらず、隠れて男子のファンクラブがあったのはもう伝説だ。  最初は顔が好みだと思った。明るい性格も自分には無いもので憧れた。その頃には男子も自分の恋愛対象になり得る事はうっすら感じていて、あの頃特有の移り気で女子男子問わずいいなと思う人は沢山いた。  その中から西に対する思いが恋だと自覚した時には、想いを伝える事無く失恋してた。恋だと自覚したのが西の一途な恋に気付いた時だったからだ。  高校一年の途中から西の身長はメキメキ伸びた。高校三年間で20センチの身長差を逆転して、今では175センチの俺よりやや高くまで成長したと言えば凄まじさが解ってもらえるだろうか。それと一緒に明るい性格はそのままにあどけなさだけが抜けて、どんどん少年から青年に変わっていった。  そして、そんな西が見つめる先にはいつも同じ女の子がいた。学校のアイドルみたいな西とは対照的な地味な女の子。だけど、よく見ていれば笑顔が可愛くていつも何かに一生懸命だった。西は何度もアプローチしては断られ、それでもその子が困った時には一番に気付いて手を差し伸べていた。  西を見詰めるうちに西の片想いに気づき、自分の恋を自覚した。何度断わられてもめげずに笑顔で彼女を応援し続ける姿に、こんな風に自分も想われてみたいと思った。  西を好きになってからは少しでも近付きたくて頑張ったけど、アイドルみたいな西と真面目な委員長認定されていた俺では共通点も少なくて、時折遊ぶクラスメイトの枠から出る事はできなかった。高校二年と三年は男友達の振りをして、好きな子の事で落ち込む西を励ましてきた。西のまねをして西を励ましながら家に帰ってこっそり泣いた。  どうして西に想われるのは自分じゃ無いんだろう、西が好きなのはあの子で、他にも西の事を好きな女の子は沢山いる。男の自分の番は一生回ってこないと、当然すぎる駄目な理由に胸を痛めた。  高校三年、高校生活の終わりと一緒に西のことも諦めようとひと足早く推薦で大学合格が決まった所で童貞を捨てた。最初は女の人。その後は高校生な事を隠して行った夜の街で男に声を掛けられ、男の人とも寝た。初めて知る快感は強烈で、西への気持ちを薄れさせてくれた。  そんな事をしているうちに、西は何故か合格不可能と言われていた同じ大学に入学が決まっていた。大学に入学し少し距離を置いたでけでたちまち西との距離は開いたけれど、相変わらず西は目立って新しい仲間との楽しげな様子が視界に入ってきた。西の存在は薄くなっても消えることはなくて、この想いは染みになって一生自分に残るんだろうと思った。  忘れさせてもくれないのかと不貞腐れながら、度々後腐れない人と寝ているうちにその中の一人と付き合い始めた。どこか可愛らしい男の人で夢中にもなったけれど、彼にも忘れられない人がいてお互いの穴を埋められずに一年もせず別れてしまった。  そんな頃に西がものすごいヤリチンになってると聞いた。最初はまさかと疑ったし信じていなかったけれど、街で、大学で噂通りの姿を何度も見掛けて噂は本当だと確認した。  昔の西に戻って欲しくてハラハラしながら見守るうち、あっという間に高校の時の気持ちが戻ってきた。そんな時だ。西が男に趣旨替えしたなんて噂を聞いた。よくよく聞いてみれば少し違っていて、狙った女の子と3Pしたいから男とも絡める人を探してるらしい。  横から攫われてたまるかとすぐに西と連絡を取り、今日の約束を取り付けた。  話を聞き終わる頃には、私は興奮と感動で震えていた。  西くんがそんな人だったなんて!  そして、北山くんがそんな想いでここにいるなんて!! 「応援する! 全力で応援するから!!」  鼻息も荒く全面協力を申し出る。私ってばなんてキモいモブ感。 「ありがとうございます。そう言って貰えるだけで心強いです」  対する北山くんはあくまで冷静だ。  といっても、どうやって協力すれば良いんだろう。今日はこのままお開きがベスト? 私の疑問に答えるように北山くんが言った。 「じゃあ、南さんが嫌じゃ無ければ今日もこのままお願いします」 「いいの? 嫌じゃない?」  不安になって聞くとニヤリと笑って北山くんが答える。 「アナル開発するんですよね。俺も高校の時とは違うので…、身体から堕とすのもありかなって」  ギャーー!! キタ━(゚∀゚)━!  思わずゴンッと机に頭をぶつけた。そして痛さと興奮でふるふると震えながら確認する。 「という事は…タチですね…」 「そうです。協力お願いします」  北山くんはそう言って天使の顔で笑った。

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