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第4話
ヤバッ
どーしよう!!
今日になっちゃった!!!
昨日は興奮して寝れなくて、明け方スイッチが切れた様に落ちちゃって気付いたら9時!!
うちに来るのは10時だっけ
あーどうしてこうなったんだっけ?
あっ、時間無い!
そんな事はとりあえず置いておこうっ
先ずはお風呂?!
それじゃあ、やる気満々と思われる?
いや、朝風呂派だっているし!
ハッ!お昼どうするんだろ?
僕が作っておくべき?
…詰んだ。
僕が作れるのはカレーかシチューか鍋…。
鍋を一緒につつく間柄にはまだ早い…かな…?
カレーは辛口?甘口?
…うん、シチューにしよう。
コトコトと鍋が鳴る。
後15分?!
シャワーをささっと浴びよう。
慌ててシャワーを浴びて、鏡で自分の顔を見る。
ぁー顔色悪いかな?営業事務のカスミちゃんオススメのパック買ったけば良かったかな…。
───どうしよう。
…キスは、しちゃったけど…そんな…いきなりそんな関係にはならないよね…。
ピンポーン
って早!!杉下くん…かな?
まだ髪から水が滴り落ちるけど急いでインターホンに出るとモニターに写るのは杉下くんだった。
ドキッ
モニターに映る彼。顔しか見えないけど僕の声を聞いた瞬間自分の髪を撫でる仕草が僕の事を意識してくれている気がして嬉しい。
ぁぁ、今日彼を招いてしまった自分の軽率な行動を心の何処かで叱咤していた自分は見事に消え失せた。
とりあえず部屋の番号を伝えてお風呂場に戻る。
髪を拭いてる間にドア前のインターホンが鳴り慌てて扉を開けると驚いた顔の杉下くんが立っていた。
早いな。
「あ、ごめんね。寝坊しちゃって…。
中に入って」
私服の彼はギャルソンの格好よりスーツの彼より僕の心臓を撃ち抜いた。
僕は自分の心臓が爆発するんじゃ無いかって思うほどドキドキし、暫くの間脱衣所でしゃがみ込んでしまった。
髪を乾かしてくるから座って待っててと叶さんは風呂場?に消えた…っておい、床ベタベタ。
拭くもんは無いのか?と部屋を見渡す。
雑巾とか普通は脱衣所とかキッチンにあるものか?タオルは…
他人んちの箪笥やクローゼットを漁る訳には行かないな。
セキュリティの行き届いたアパート。
キッチンを覗くとIHの上には鍋がコトコトと音を立てていた。
これ、焦げるんじゃね?
俺は鍋底をかき混ぜると火を消しておく。
俺の為に作ったのかと思うと愛おしさが溢れ出す。
これも初めての感覚。
キッチンペーパーを見つけ、床を拭いてゴミ箱を探す。
ん?この匂い…
αの…いや、これは──
「開けちゃダメ!!」
止まる訳もなく、俺は勢いよく押入れらしき扉を開けた。
「これは…」
「ごめんっ…ゴ、ゴミの日が、あ…明日で
片付けるところ…なくて…」
叶さんは真っ青な顔で俺とゴミと言われた物の間に体を割り込ませた。
肩が震えている。寒いからな訳じゃないだろう。その肩に手を置くと俯いたままビクッと肩を震わす。
「違うだろ?」
ビクッと俺の声に叶さんの肩が過剰に震えた。
俺は本能でその肩を抱き寄せた。
「コレは俺の為の巣だろ?
なぁ、良い子だろ?ちゃんと言って?」
耳元で囁く。俺がこんな事言う日が来るとは…
見える耳は真っ赤だ。でも叶さんは首を横に振る。
「違う…ゴ、ゴミ…捨て忘れた…だけ…」
叶さんは拳をキツく握っている。
「なんで?上手に出来てるよ?
俺の香りの付いたものを一生懸命集めてくれ
たんだな。──可愛い」
叶さんが俺の腕の中きら消えたかと思ったら、崩れ落ちて床にぺたんと座っていた。
「ウソだ…。うまくなんか…出来て…ない。
可愛くも…ないもん」
もん、て。可愛すぎだろ。
「でも、さ。もっと良い巣材欲しく無い?」
「欲しい!」
「欲しいよね?ん、良い子」
即答出来た叶さんにご褒美だとばかりに俺はその頬を掬い上げ額にキスを落とす。
ベッド借りて良いか聞くと、又頷き今度は頸 まで真っ赤染まっていた。
抱き上げてベッドに運ぶ叶さんのその首にはΩの保護用の首輪が嵌められていた。
さっきは無かったのに…心の中で舌打ちする。
叶先輩の部屋は5畳程のキッチンダイニングに8畳程の寝室がパーテーションで区切られたワンルームに近い作りの部屋だ。
Ωの部屋に入ったのは初めてだが、コンパクトで良いと思う。
「良い匂い…。このベッドすごい叶さんの匂い
しますね」
「や、シ、シーツ変えるっ」
「物理的な匂いじゃ無いし、必要無いから」
「あっ、な、鍋!火を消さないと!」
「IHだろ?」
「でも、止めないとっ」
「クスッ…止めた」
ベッドに降ろした叶さんはジタバタ俺の下でもがく。そのトレーナーの裾からそっと手を這わす。
「え…?ひゃぁっ」
「ごめん。俺の手少し冷たいな」
手を擦り合わせてみる。
今までこんな事気にした事もないのにな…。
「ちょっ!あの杉下くん!?」
「なんですか?」
「僕、気付いちゃったんだけど、色々なんか
順番がおかしいよ?」
「んー」
上目遣いにクレームを言う叶さんが可愛すぎて深くキスをしてやる。
「ん、ん…ぁ…んっ、ふぁあっ」
「チュッ。かわいい声」
「言わないで…////」
叶さんは茹で蛸状態だ。
でも、まぁ…
「あのさ…」
叶さんが潤んだ瞳で俺を見る。
「ユキさんって呼んで良いですか?」
「ぇ?」
「そんで、付き合って下さい。
あ、恋人になって下さいって意味ね」
叶さんはガクンと意識を手放した。
コレは、新手の逃げ方だな…俺はため息を吐きながら悪戯を思いつく。
まぁ、今まで抱いてくれと言われた事はあったけど、自分から進んで抱くことも無かったからこう言うのも新鮮で良いかもしれない。
俺は自分が持って来たボストンを開けた。
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