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嫁入り10

暴虐王は舌打ちをすると剣を引き抜いた。 その後ろで、ふう、と溜息をもう一人の男がついた。 「殺さないのかい?」 ニコリと笑いながら暴虐王に言う。ギクリと固まると暴虐王は「殺す意味がないだろ。」と返した。 暴虐王の言葉とは思えなかった。 判断が面倒で役人を殺したことがある。そういう噂のある人物が言う言葉だとレオニードには思えなかった。 「でも、もう返してはやれないのは分かっているだろう。」 暴虐王はしゃがむようにして腰を降ろした。 のろのろと立ち上がるレオニードと視線が合った。 「何故見ない振りをしなかった?」 平坦な声だ。先ほどの柔らかな声と全く違う、感情のこもらない声だった。 興味なさそうに視線をそらしたお目通りの時の声と視線と一緒だとレオニードは思った。 見ないフリをすることが正解だったのだと、その時初めて気が付いた。

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