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嫁入り11

聞き間違いであればどれだけ良かっただろう。 「そうできればよかった。」 今わかっていることは二つ。 あのまま隠れていれば、レオニードとユーリィは国に返される予定だったこと。 暴虐王の先ほどの態度は帝国にとって隠しておきたかったこと。 それを知ってしまったレオニードは国へは帰れない。 せめて、ユーリィだけでも国に帰してやりたかった。 そもそも、自分達を国に返す予定だった事すら知らなかったのだからどうしようもないのだけれど、少し前に戻れるのなら戻りたかった。 「俺達を返すつもりなのなら、このまま返してもいいでしょう? どうせ誰も信じやしませんよ。」 レオニード自身信じられないのだ。 夢だと言われたらそちらの方を信じてしまいそうな気さえする。 あの、冷たい態度の男があんな砕けて優し気な声を出すとはレオニードだって思わなかった。 今目の前にいたって、混乱しているのだ。 あの暴虐王が優し気で明るい人間でしたと言っても、誰も信じないだろう。 「そういう訳にもいかない事くらい王族なら分かるだろう。」 暴虐王はレオニードの言葉をバッサリと切り捨てる。 けれど、つい最近まで皇位継承権どころか王族としてさえ認められていなかったのだ。 王族だからと言われても、納得ができるものではない。 道理など分かるはずが無い。 分からないし、わかりたくもない理屈なのだろうとレオニードは思った。

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