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王の責任2
別に口からでまかせだった訳ではない。
事実王族に近い血筋の人間は生まれてくるときに石を握り締めている事があるのだ。
俺の首からぶらさがっているこれも、俺が生まれてきたときに持っていたものだ。
本当に昔話に出てくる様に王の大切な人を守ってくれる石なのかは、レオニードにも分からない。
けれど、王族として選ばれたのはこの石があったからだろう。
レオニードが王族であることを証明しているのはこの石だけだ。
昔話では伴侶を守るために身代わりになった石らしい。
実際は少し違うのだと、国王である父に会ったときに教えてもらってはいた。
少なくともレオニードの伴侶である“暴虐王”に渡すつもりは無い。
使われる事もなく、一生レオニード自身の首からぶら下がっているだけのただの紫色の石だ。
それでもとりあえず今日の風呂はのんびりと入れるのだとレオニードは息を吐いた。
伴侶を救う石なんていう御伽噺にすがれるものなんて何も無かった。
◆
翌朝目を覚ますと、そこには暴虐王がいた。
軍隊にいたときはこんな事は無かった。
誰かが接近したときに気がつかずに寝てしまっている事など絶対に無かった。
レオニードは飛び起きると、思わず身構える。
暴虐王は全く表情を変えず、ただレオニードのことを見ている。
「守り石を持っているというのは本当か?」
思ったより砕けた言葉で暴虐王はレオニードに尋ねる。
何故、わざわざレオニードの元に来たのか、真意が読めない。
レオニードはどのような答えが正解なのかわからず「はい。」とだけ答えた。
「……そうか。」
暴虐王はそれだけ言うと黙り込んでしまう。
何のためにわざわざレオニードの元に来たのか。
伴侶と寝室を伴ににするのが普通なのだろうとは思うが、この人が自分の元を訪れる事は一度たりとも無かったし、そもそも婚姻が正式なものとなっているのかも怪しい。
書類を書いた覚えもないし、宣誓もしていないし結婚式も上げていないのだ。
本当の夫婦じゃないからという訳ではないけれど、こういった時、なんと声をかけたら良いのかさえレオニードは知らない。
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