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王の責任3

それでも、ユーリィを守らなければならない義務がある。 その部分だけは分かっている。 「何か問題があったということですね?」 レオニードが聞く。 暴虐王は静かに息を吐き出した。 「軍にいたとき、着替えで周りを気にしたか?」 「……いえ。」 聞かれていることの意味が分からなかった。 「お前の周りで、世話を担当している者たちは皆“命令”を受けてやっている。 それを達成できない事が例えば軍においてどういう扱いを受けるか分かっているか?」 淡々と、けれど暴虐王はレオニードの瞳を真っ直ぐ見据えて言う。 喉元まででかかった「けれど」という言葉をレオニードは飲み込む。 「俺と、俺の部下と、俺の国。貴方が生殺与奪の権利を持っている事は分かりました。 自分と周りを救うために王族と貴方の国のルールに従うという事も。」 「分の悪い敗戦処理の様なものだ。 せめてルールを教えてやるから、素直に学べという事だ。」 まるで友に言うような軽い言い方だった。 少なくとも暴虐王としてその名を知られている皇帝が使う言葉だとは思えなかった。 「石がでっち上げだと思われる事は考えなかったのか? その石を奪われることは?」 目の前の男に問われ、レオニードは答える事が出来なかった。 誰がこんな訳の分からない石を盗むのだろうかと思った。売っても間違いなく二束三文にしかならない石だ。 暴虐王は面白そうに、けれど哀れなものを見る様に笑った。 「本来であれば、俺とお前は夫婦だ。 初夜を周りに見守られて行わなければならない。 それを回避してるだけありがたいと思って欲しい。」 「……それは、あんたも災難だろうしな。勃たないだろ俺相手に。」 思わず出てしまった率直な感想に暴虐王は声を出して笑った。 人に夜の営みを監視されるより裸をさらす方がマシだろうと暴虐王は言っているのだ。

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