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名前2
「完敗だ。」
そう“暴虐王”は笑った。
けれどあまりそうだとは思わなかった。
レオニードは本気を出していたけれど、果たして暴虐王もそうだったのかは分からない。
まるでレオニードの力を確認するみたいなそんなやり取りだった。
けれど、あのニヤリと笑った瞬間だけは彼の素が出ていたのかもしれない。
「調べていた軍歴と少しばかり違ったな。」
暴虐王に言われるがレオニードは肯定も否定もしなかった。
国のためにその質問に答えることはできない。
確かにレオニードは公式に所属とされていた部隊とは別の任務を与えられてそこで働いていた。
けれど、味方を危険にさらすかもしれない情報を流すわけにはいかないのだ。
そんなことは百も承知なのであろう。何も答えないレオニードに暴虐王は気にした素振りも無く負けたにも関わらず上機嫌だった。
「名を教える以外に酒でもふるまおうか?」
聞かれてふと最近飲酒をしていない事に気が付く。
けれどそれよりもとレオニードは欲しいものがあった。
軍にいたころ上官は部下に秘蔵の酒だの煙草だの、それから菓子の様な嗜好品をそっと手渡すことがあった。
ユーリィは年齢的に菓子がいいだろう。
「この国には美しい砂糖菓子があると聞きます。是非それを。」
「甘党だったとは、それもこちらの調べとは違うな。」
当てにならないものだと暴虐王が言う。
レオニードは思わず笑った。
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