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名前4
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帝王学ではむやみに人に笑顔を振りまいてはいけないと知ったのは翌日の事だった。
劉祜がほとんど表情が変わらなかった理由がその時分かった。
軍でも上官が威厳表すために厳しい表情をすることはあって、その必要性ももちろん分かるが、レオニードはそのすべてを納得することはできなかった。
それに、昨日確かに劉祜は笑っていた。
暴虐王らしい、ニヤリとした笑み以外の柔らかな笑みを昨日見せていたのだ。
レオニードが妃だから、という理由だとは思えなかった。
そもそも、本人も周りもレオニードが妃であるということを認めてないとすら思っていた。
良くて体のいい人質。基本的にはこの国にとっての邪魔もの。それが今のレオニードの立ち位置だろう。
別に結婚式を挙げてないからではないし、夫婦らしいことを何一つしていないという理由でもない。
彼は、帰してやれなくなった様な話もしていた。
恐らくは、この結婚を最初から無かったことにしたかったのは知っている。だからそれが理由で剣を交えた訳でも笑顔を見せた訳でもないだろう。
こうやって知識を少しずつ積み重ねていく度に、哀れみだったのだろうかとも思う。
何も知らず平民に毛が生えたような状況なのにこの場所に来たレオニードの惨めさに哀れんだのかもしれないと思っていた時期は確かにある。
結局何が暴虐王たる彼の琴線に触れたのかは分からないが、少なくとも彼が“暴虐王”と呼ばれている理由が少しずつ分からなくなっていることは事実だった。
何故彼は暴虐王と呼ばれるようになったのか。
自分の親族を皆殺しにした、とも、戦争をおこして周りの国を巻き込んで殺戮を繰り返したともいわれている。
ある日突然冷酷な性格が表れたのだという話も、生まれたときから暴力的な子供だったという話も聞いたことがある。
レオニードも人を殺したことはある。
軍に所属していれば当たり前のことだったし、人を職務として殺したことのある人間が即、傍若無人な訳ではないと思っている。
戦争をしたことがあるからといって、暴虐王とまで呼ばれる様になるものだろうか。
誰かを死罪にしたとしてそれだけで暴虐王と呼ばれるなら世の中の王の大半が暴虐王だろう。
気遣いのあるもてなしを受けているし、外に人はいるものの一人きりの時間もレオニードにはある。
そうなるように手配しているのが、暴虐と呼び名についてしまっている皇帝なのだろうかと疑問が沸く。
それを自分自身で確認するすべは何もないが、それでも知ってみたいと思ったのだ。
「本人に聞くわけにもいかないしなあ……。」
ぼんやりと呟いた言葉は「何をだ?」という声に拾われた。
驚いて声の元を見ると、まさにその本人が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
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