31 / 124
名前7
「その顔……、あははは。」
思わず声を上げて笑うレオニードに、劉祜が微笑む。
「じゃあ、お妃サマとしてありがたくいただきます。」
ひとしきり笑った後、レオニードが言った。
「ああ、婚姻の誓いとして受け取って欲しい。」
劉祜はまじめな顔で言った。
この人は本気で自分と婚姻する気持ちなのだと少しばかりレオニードは驚いた。
「何も誓えはしないけれど、レオニードとその民の命はできる限り尊重しよう。」
そもそも、誓いの意味がある婚姻ではないこと位レオニードでも知っているし、劉祜は他国の民の命を保証できる立場なのかといえば今のレオニードには分からなくなってしまっている。
だからこそ、劉祜のこの言葉が、彼の最大限だということが理解できる。
「ありがとうございます、皇帝陛下。」
レオニードは座っていた椅子から立ち上がって頭を下げる。
このポーズがこの国での正式な挨拶だということは、もう学んでいた。
そこで、彼の事をもう“暴虐王”だと全く思っていないことに気が付いた。
そして、今まで暴虐王という幻ごしに彼を見ていたのだろう。
ともだちにシェアしよう!