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名前8

形式上だけの婚姻だ。 だけど、友になることはできるかもしれない。 レオニードはそんな期待を抱いてしまう。 何故、彼が暴虐王と呼ばれるのか分からない。 自分もつい先日まで、心の中で彼の事をそう呼んでいたにも関わらず、まるで分からなかった。 本人に聞けば答えてくれるだろうか。 その考えはすぐにレオニード自身で否定した。どうして彼がレオニードに教育を施してくれるのかは知らないが、何を教えようとしているのかは少しずつ朧気ながら分かってきている。 聞けば答えてくれるような世界に彼は生きてはいない。 それであれば、聞かないのが礼儀だろう。 彼に報告されずに教師たちに教わる方法があるのかも分からない。 けれど、彼が何故暴虐王とまで呼ばれなければならないのかが少し前から気になって仕方が無いのだ。 こんな風に誰かのことを知りたいと思うことは珍しい。 「レオニードのふるう為の剣は、また今度にとっておいて欲しい。」 劉祜に言われ、また剣を交えようと話したことを胸の中でそっと反芻する。 それは、レオニードの中で、とても尊い約束になっていることを劉祜は知らない。 けれど、再び鍛錬を始めたということは誰かから聞いているのだろう。 そっとレオニードの指を撫でる。 近い距離ではあった。 けれど、触れられるとは思っていなかったのだ。 剣だこができている無骨な手だ。そんなものにわざわざ触れようとするとは思わなかった。 思わず固まるレオニードに劉祜は双眸を下げる。 何が面白いのか、レオニードには分からなかった。

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