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月明り4
返事は予想した通り、劉祜は参加できない旨とそれから、好きに楽しむ用にという旨が流れる様な文章で書かれていた。
いつもの口調とあまりにも違う、劉祜の文章にまるで秘密の|文《ふみ》のやり取りの様で少し楽しい気分になる。
バタバタと周りが準備をしている数日、ぼんやりとその様子を見て自分が手出しをできないもどかしさを少しだけ感じた。
「あの、鍛錬を……。」
してくるから、とユーリィに言うと。彼は視線をさまよわせて「お庭ですよね? 御同行したほうがよろしいでしょうか?」と言った。
忙しいことは分かっている。
ユーリィも知識が無い中、異国の地で必死になっていることも知っている。
レオニードに多くの人間が付くようになってからユーリィも必死に教えを乞うていた。
「いや、できれば一人になりたい。」
そう言うと、ユーリィは曖昧に笑った。
こういう笑い方をする人間とあまり今まで関わったことが無かったため、どういった心持ちでそう言った表情をするのかレオニードには分からない。
けれどそれを確認するにもユーリィは忙しすぎるし、改めて日課になっている剣の鍛錬を休みたくないとレオニードは思った。
「終わったら、休憩につきあってくれ。」
レオニードが言うと今度は、花がほころぶ様な笑顔でユーリィは笑った。
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