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花見1
昔、花見を友人としたことはあった。
けれど、こんな風に着飾ってというのは初めてだ。
体面がと言うのは分かっているが、他の貴族が見ている場所だとは思えない。
宮殿の中なのだ。他の誰かの目に触れるとはレオニードには思えなかった。
勿論そもそもこの中にいる人間は女官にしろ奉公人にしろ、貴族の人間なのだという事は頭では分かっているのだ。
彼らの常識では当たり前のことを当たり前にやっているだけなのだろう。
貴族としての礼節と、ふるまい。それを大前提として暮らすのが当たり前でそれを必要としている者たちのの普通の花見。
けれど、あまりにも華美で、レオニードは疲れてしまう。
ぼんやりと渡された茶器を手に取る。
美しい透かし彫りの様な技法が施されているそれは、薄水色をしていて美しい。
並べられた菓子も色とりどりだ。
それよりも何よりも、思いのほか沢山の桃の木が生えていてレオニードは驚いた。
数本あるのが綺麗だという話なのだと思っていたが、一面の満開の花に思わずレオニードも感嘆の声を上げてしまった。
自分の着ているひらひらとした服の事を忘れられる位桃の花は美しい。
貴族のたしなみだという恰好はおそらく妃用の装いで男性向けにアレンジされているがレオニードには落ち着かないものだった。
「噂のお姫さんってあんたのことかい?」
イメージと随分ちごおてる、と訛りのキツイ共用語で話しかけられる。
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