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花見3
「晃《こう》と申します姫君。
気軽にこうちゃんとでもお呼でや。」
男は言う。
そこに家名が無いのは態とだろう。
全てを知っていて、わかっていてやってる。
けれど、レオニードにはこの国の貴族の力関係など碌に分からない。
教師に多い話し方や姓、それに彼の世話をしている者たちの姓。それが貴族の物なことしか分からないのだ。
それに。
先ほどからレオニードを姫君と呼んでいるのも態とだろう。
姫君と程遠い見た目をしているレオニードを態々姫君と呼んで反応を試しているのだ。
劉祜からこの男の話を聞いたことは無かった。
けれど、この国の将軍であろう事だけは分かった。
「レオニードと申します。
桃の花があまりにも美しいので、茶会等開いておりましたところです。」
話し方がぎこちないことは分かっていた。
けれど、気楽になんてとてもできそうに無い。
「花見か!
それはええやんなあ。」
わはっ、というわざとらしい笑い声を晃はあげた。
花見と言えば踊りや!晃は面白そうに笑ってから「是非姫さんの踊りを見てみたいもんや。」と言った。
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