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花見7
この城での奉公は長いのだろう、いつもは宮廷の事に誰よりも詳しい風に言っている人間が逡巡した後口を開く。
「あの方は、我々の国の大司馬でございます。」
それは確かこの国で最高の位を持つ軍人だ。レオニードは目を細める。
劉祜の腹心という事なのだろう。
それに……。
レオニードは「そうか。」といいながら微笑む。
我々のという言葉にレオニードが入っていない事は分かっている。
それでも私どもという言葉を使われなかった配慮に感謝する。
「私の振る舞いに、何か問題はありましたか?」
それであればお詫びを、とレオニードは言う。
「所作についてはお世辞にも及第点とはいきませんが、不敬をはたらいたということはありませんよ。」
レオニードは自分の周りにいるほぼすべての人間が家柄まですべてこの国に調べ上げられて問題の無い人間達だと知っている。
少なくともレオニードよりも貴族を分かっている者達だ。
頼み込んで、頭を下げて貴族としての振る舞いの教えを乞うている。
教師としてレオニードのもとに来ている人とは別の先生の様なものだった。
帝王学としては間違っているのかもしれない。
けれど、レオニードには他に選択肢が無かった。
けれど、誰もおかしかったとは言わなかった。
踊りについては誰も触れなかった。
自分の幼いころに触れられるようでレオニードは嫌だったのでその気遣いがありがたかった。
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