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暴虐王の過去1

その夜、レオニードの寝室に来たのは劉祜では無かった。 「やあ、お姫様、おひさしゅう。」 晃は当たり前の様に、寝室に入り込む。 今日であったばかりだというのに、白々しい台詞を当たり前の様に言う。 「何かありましたか?」 何も無いのは知っている。 そもそも、また一人なのだ。 誰も伴わないで、人質の部屋に来るのがおかしい事はレオニードにも分かる。 そもそもここまでこれたこと自体が普通ではないのだろう。 本来ここに来るまでに必ず人がいてこんな風に易々とこの場にはいられないはずだ。 建物の構造だって、人員の配置だってどう考えたってそうなっている。 これがレオニードではなく姫君だったら重大な事件が起きかねないのだ。 けれど、人を呼んで何とかなる話だとも思えない。 この男に逆らえる人間が周りにはいない。 「いやいや、今日の踊りがあんまりにも綺麗だったからなあ。」 ニヤリと晃は笑う。 それが程度の良い笑いだとは、レオニードにはどうしても思えなかった。 「お礼に、昔話をしよと思うてな。」 “暴虐王”様のおとぎ話をしよか。確かめる様に晃は言う。 彼が話すことが本当の事だという確証はない。むしろこの男は嘘つきだ。 そういう匂いのする男だ。 ただ、レオニードが断ったところでこの男は話すのだろうということも分かっていた。

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