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暴虐王の過去2

晃の話が始まる。 昔々でもない時代、彼はこの国の王子として生まれた。 上の兄は優秀で、下の兄は優しかった。 自分が王になることは無いであろうということは幼い彼にも分かっていた。 けれど毎日懸命に勉強してたらしい。 らしい、というのはまだ当時あったことが無かったんや。 懐かしむように晃は目を細めた。 それが感慨というべきなのか、まるで懐かしい日々を思い浮かべている様な表情で、レオニードはいささか驚く。 晃の素の表情なのか、わざとそれを演出しているのかが分からなかった。 体が弱かった。と聞いている。 けれど、宮殿で大きな宴があった時には、さすがに出席していた。 それが、俺たち四人の出会いやったん。 「四人?」 二人では無いのか? 何の話を晃はしているのか。 晃はしいっと黙らせるように口に上に人差し指を置く。 「まず、俺が王様に声をかけてな。」 あの事の王様はまだ、少し人見知りするところがあってん。 有力貴族の子と王族や。周りは当たり前と思ってたところがあった。 それから年の近い貴族の息子、今はお大臣さまや。式典で会った事あるかい? レオニードにはもしかしたらという人物がいたが、それが彼の言っている男なのかは分からない。 あの日、初めて素の劉祜を見たときに一緒にいた男がそうではないのかとレオニードは思った。 それから、もう一人……。 晃は一旦言葉を区切る。懐かしそうに目を細めて「お姫様がおったんや。」 かわいい、かわいいお姫さんがな。 嬉しそうに晃が言う。 それはレオニードに向って蔑むようにいう姫君という響きと、まるで違って聞こえる。 ――けどな。 ぞの声はぞっとする位平坦だった。 「姫さんの国にもあるやろ。おとぎ話が。」 王族が本当に愛したものに身代わり石を渡すと何かあった時に身代わりになれるそうで? うちの国のおとぎ話はそんな救いのある話じゃない。 「人柱である巫女が必要だって話。」 この国は昔々龍が治めていた。その龍の力を押さえるためにって、まあどこにでもある御伽噺だ。 「姫さんは知っとるか?」 彼の口角が歪に上がって不気味な笑みを浮かべる。

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