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暴虐王の過去3
それはまるでレオニードの事を偽物だと言っている様に見える。
「そのお姫様は?」
思ったより冷静に声は出た。
軍にいた所為だろう。どんなに辛くても衝撃的なことがあっても声だけは出る。
御伽話の世界の様なものだ。それの残渣だ。
レオニードだって、石を握って生れてきているが、首からぶら下がっているそれは奇跡等起こしたことは無い。
迷信とまでは言わないが、劇的な効果が望めるとは思えない。
そんなものがあれば、レオニードは軍人にもなっていないだろうし、人質としてこの国にも来ていないだろう。
そんな利用価値のあるものを普通の為政者は離しはしない。
それがこの世界の事実だ。
「ありえないやろ。
そのありえない事のために姫君は生贄になった。」
決めたのはこの国の王族だ。
ああ、そうだ。レオニードはようやく最初の話しに思い至る。
この話は劉祜のものだ。
姫君が貴族の令嬢の事なのか、王族のお姫様なのかは分からない。
それでも――。
レオニードの思考は「劉祜は最後まで反対しとった。けど、ほとんど表舞台に立っていなかったあいつに、発言権なんぞ無かった。」という言葉にかき消されている。
しかもな。
晃の顔は笑いだしそうな、泣き出しそうな表情をしている。
救われる筈の国に大きな天災が起きた。
それで、あいつらはもう一人生贄をささげようとしたんや。
だから、あいつは……。
今まで饒舌だった男の言葉が詰まる。
それで察しがついた。
そのため、次に紡がれた言葉をレオニードは受け止められた。
――だから、暴虐王は自分の父と兄たちを殺した。
かなり途中経過を端折られているということにレオニードは気が付いた。
けれど、今まで噂として聞いたどの話よりも具体的だった。
それに、この話が事実だとすると。
レオニードは己の過ちにようやく気が付く。
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