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暴虐王の過去4

この男の言っていることが本当であれば、暴虐王は、ありえもしない奇跡にすがるものも、それを言い訳にするものも許せないのだろう。 御伽噺の所為にするような人間を彼は一番軽蔑していることになる。 レオニードはようやく、何故劉祜が自分の元を訪れたのかに気が付く。 きっと、彼はレオニードを許せなかったのだろう。 石は御伽噺で、レオニードが言い訳として使ったことにもきっと気が付いている。 「優しい兄さんじゃなかったのか?」 嘘であって欲しいという願いは、晃のどう猛な笑みで消えてしまう。 「身内に優しい事と、それ以外を顧みない事は両立するやろ。」 要するに、劉祜は自分に優しかった人間を含め、すべてを殺して玉座についたという事だ。 しかも、その時は最善と思われていた慣例が許せなかったという理由で。 恐らく、何故殺したのか。当時の状況だけでは誰も思い至らなかったのだろう。 「それで?」 「それで、ってなんや?」 生贄の女の子は? その後のこの国の拡大路線を選んだ理由は? 聞きたいことは沢山ある。 けれど、一番聞きたいことは何だろうか。 「その道は、暴虐王一人で決めたことなのか?」 あの優し気な眼差しをするごく普通の人間が、どんな想いでその道を選んだのだろう。 晃は答えなかった。 自分がその同志なのだという言葉を期待していたのかもしれない。 その代わり、彼が答えたのは「知っとるか? お姫様はまだこの宮殿の地下で龍の力を押さえるために幽閉されているんや。」 とだけ言った。 冷え切った眼差しでレオニードは見つめられる。 劉祜は生贄を出さないために、弑逆の王となった。 けれど生贄はこの城の地下に幽閉されている。 一種のパラドックスだった。

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