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暴虐王の過去6

この国に来るとなった時点で、色々なことを覚悟したし諦めた。 嬲り者になる可能性は考えたことがある。 けれどこの国に来て、劉祜と知り合って、それは関係のないことなのかもしれないけれど。 だけどこれだけは、この目の前の男では嫌だと思った。 「何をしている。」 その声は、初めてその言葉を聞いた時よりも低く平坦に聞こえる。 けれど、劉祜の声だと気が付いて、レオニードはホッとしてしまう自分に気が付く。 「反撃していいぞ。皇帝として許そう。」 劉祜が言ったのはそれだけだった。 手を貸そうともしないし、けれど密通を疑う様な素振りも無い。 レオニードにはそれで充分だった。 「悪いな。」 そう言うと次の瞬間、晃の体が吹っ飛ぶ。 すぐに立ち上がったレオニードが尻もちをついた状態の晃を見下ろす。 殺そうとはしていないけれど、一応本気でやった。それが劉祜から許可されたものだと思ったからだ。 「一応これでも俺、この国で一番強いって思ってたんやけど……。」 晃に言われるが、そんな事レオニードにとって知ったことではない。 「やはり、超近接戦闘向けに訓練しているんだな。」 劉祜に言われ「どうだろうな。」とレオニードは答える。 「そいつをどうする?」 「殺していいというなら殺すが。」 それが無理なことも、自分の言葉が度を過ぎていることにも気が付いているが止められなかった。 「とんだ、姫君やな……。」 晃はそういうとすぐに体勢を戻す。 この件で自分はどうにかなることは無いと確信している軽口を漏らしながら、晃は「冗談や。奇跡の石とやらを見せてもらおうってだけやった。」と言った。 その後、劉祜の耳元でこの国の言葉を二、三言呟いてそのまま、すたすたと歩いて行ってしまう。 先ほどまでの何もかもがまるで冗談だったような気軽さだった。 部屋から出る直前で振り返って「姫さん、じゃあまたな。」とだけまるで当たり前の様に言っただけだった。

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