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暴虐王の過去7
何を話せばいいのか分からなかった。
何を話しても嘘臭くなってしまう気がした。
謝りたいのに、じゃあ何を謝れば伝わるのかが分からない。
そもそも、晃の言っていることが本当だという前提になってしまう。
「大丈夫か?」
最初に口を開いたのは劉祜だった。
「ああ。」
「今度からああいう事があったら、相手が誰であっても殺していいぞ。」
「相手が貴族でも?」
理解できていない様だが、扱い的にはお前も貴族だからな。
劉祜が言う。
王族扱いをされていないことは知っていた。
一人も守れない権力しかない人間を貴族と呼んでいいのか、レオニードには分からなかった。
「別に何もされちゃいない。
ただ、アンタの話しを聞いていただけだ。」
空気に緊張が走るなんてことは無かった。
劉祜はお見通しだったみたいだ。
もしかしたら、晃が出ていく前囁いた言葉で気が付いていたのかもしれない。
「……そうか。」
それでも劉祜の口は重い。
「俺が一族郎党を殺した話か? それとも隣国を滅ぼした話か?」
自嘲気味に劉祜が笑みを浮かべる。
別に責めたい訳じゃない。
「それよりも、俺の事が許せないんじゃないか?」
どれだけの命を彼が奪ったかより、知りたい事があった。
傲慢だろうか。物事の優先順位すら測れないと思われるだろうか。
けれど、今レオニードが一番気になっている事は、劉祜がレオニードの事をどう思っているかだった。
あの守り石を言い訳にした日、劉祜がレオニードをどう思ったか。それが一番気になっていた。
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