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暴虐王の過去9
「お前の瞳の色に似ている。」
皆こういう石なのか?
「さあ? でも父は黄色い美しい石を持っていましたね。」
王族に知り合いはいない。生まれる時に持っていない人間の方が多いという知識はあるが実物を見たことは無い。
輝石だと判断できるような状態のものを皆握っているのかさえ分からない。
「まあ、形式上のものなので、お好きにしてください。」
劉祜は逡巡した後、首飾りをそのままレオニードの首にかけた。
これが誓いになるかといえば多分違うだろうなという二人だけのやり取りだった。
それから劉祜は、ソファーにどっかりと腰をかける。
レオニードの瞳をしっかりと見て劉祜は口を開いた。
「俺は沢山の人を殺した。」
静かな声だった。けれどレオニードを見据える目には覚悟が灯っている。
レオニードは劉祜の横に座る。
「自分なりの理由はあった。
もうこれまでに何人殺したのか、正確な数は分からない。」
けれど……。
劉祜はそこで一度、言葉を区切った。
「俺にはやらねばならぬ事がある。」
まるで自分自身に言い聞かせる様な物言いだ。
「やらねばならぬ事?」
人質として、巻き込まれぬ事が一番なのはレオニードにも分かっていた。
けれど、自分の意思が聞かねばならぬと命じてしまった。
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