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暴虐王の過去10
「世界を変えたい。」
それはとても抽象的な答えだった。
けれど、その次の言葉に別に抽象的な一般論の問答をしている訳ではない事に、レオニードも気が付いた。
「そのためなら世界征服でもなんでもするつもりだ。」
相手が劉祜でなければ、妄言か冗談だと思われる様な台詞だ。
けれど今、世界で一番それが可能な劉祜がそう断言していることに意味がある。
多分この男はすべての国を征服することも厭わないのだろう。
それを簡略化するため、レオニードの様な人質が必要なのだろう。
それで仮初の同盟さえも結べない国は亡ぼすつもりなのだろう。
彼の最終目標はまだ聞いていないのに、ゾクリと背中を冷たいものが伝う様だ。
「世界を変えるって?」
レオニードがたずね返す。
「聞いたんだろう?」
奇跡の代償になった憐れな少女の話を。劉祜は口角を上げる。
けれど瞳がまるで笑っていない。それで、レオニードは晃が言っていたことが概ね真実なのだと確信した。
けれど、この話と劉祜の目指しているものの関係がレオニードには分からなかった。
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