55 / 124

暴虐王の過去11

「生贄を必要とするような国は世界に存在すべきではない」 劉祜はそうはっきりと言った。 けれどそれは、彼の自死願望ではなくそのような国をなくすためにすべての国を併合するのだという意思に聞えた。 「延々と戦いを続けて、小国のままで、何かあるたびに立ち行かなくなる。 この世界はそんな国ばかりだ。」 その表情には忸怩たる思いが見て取れる。 けれど喉の奥に、それに巻き込まれる他の小国出身者としての言葉がせり上がる。 どうしようも無い気持ちだった。 征服者と被征服者なのだ。 だからこそレオニードはこの国に来ている。 「世界を一つの国にしたら、世界は変わるのか?」 子供の様な質問だとレオニード自身が思う。 帝王学というものを学ぶ前だってそんな質問をしたら失笑されただろう。 軍でもそんな青いようなことを言うやつはいなかった。 けれど聞かずにはいられなかった。 「少なくとも、天災が起きた時にはその地域を助けられるだろう。」 それに―― 劉祜は続きを話し始めた。 外敵と戦うためには団結が必要だ。 そうはっきりと劉祜は言った。 彼の言った外敵という存在がレオニードには分からなかった。 現在世界地図にほぼ唯一独立して書かれる公国のことだろうか。 あの国は帝国ほどではないが、国力もある。 しかし話の流れ的に関係の無い別の国を、劉祜が外敵扱いするとはレオニードには思えなかった。

ともだちにシェアしよう!