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暴虐王の過去13

魔獣が普通の獣になったら、人間は随分暮らしやすくなると思わないか? 言われた言葉に思わずレオニードは頷く。 全てを殺すなんて無理で、けれど、魔獣が猪や鹿や熊の様になれば人間は随分暮らしやすくなるだろう。 勿論、今だって熊に襲われたなんて話は山へ行けばよく聞く。 けれど、そんなものと比較にならない位、魔獣の被害は多いのだ。 自分でそう考えた時点でようやくレオニードは魔獣だけが突出して人里に出ていることに気が付く。 魔獣を調教しているところも、魔獣と共にある人間もレオニードは見たことが無かった。おそらくとても狡猾な者が行っているのだろう。 人が安心して暮らせれば、災害があっても人柱をたてる必要は無いだろう。 今よりもずっと安心して暮らせる社会ができる。 そういう世界を劉祜は目指している。 「お姫様が生きているっていうのは本当なのか?」 晃の話しで一つ引っかかっていたことがある。 お姫様と言われていた少女だ。 別にレオニード自身自分が姫とか妃とかそんな柄ではないこと位分かっていたし、そんなものになりたいと願った事も無い。 しかし、あそこまで露骨な態度が不思議だったのだ。 「案内しよう。」 目を細めて劉祜は言った。

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