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暴虐王の過去16

馬鹿にしている、というより完全に下に見えている感じの方が近い。 下士官が兵卒に話しかける時に少し似ているとレオニードは思った。 口調ではなく態度がどことなくそう見えるのだ。 今、世界で一番権力を持っている人間は劉祜だろう。 それを平民という少女には違和感しかない。 それに、レオニードの事を当たり前の様に番だと劉祜が言った事にも、正直驚いた。 レオニードは人質だ。別に伴侶という訳ではない。 しかも、声からもレオニードも男だということは分かっているだろうに、その事には触れもしない。 そこは彼女にとって些末なことなのだろう。 姫君のイメージがガラガラと崩れ落ちる。 晃は夢見る様にお姫様の事を語った。まるでレオニードが姫君としてふさわしくない様な口調だったのに、目の前の少女も姫君からは程遠い様に見える。 別にレオニードは姫じゃないから当たり前なのだけれど、何故晃があんなにもこだわっているのかは気になった。 けれど、少なくとも彼女がここから動けない事は痛いほど分かる。 これが国土の為なのか、国家の為なのか、それとも意味のない事なのかはレオニードいは計り知れないが、それでも普通にこの幹の様なものを切ってしまえば少女がタダでは済まないことが分かる。 「多分きっと今日は私を紹介するだけなのでしょうね。」 少女は面白そうに笑う。それでレオニードは驚く。 初めて、劉祜と同じ王侯貴族の匂いの様なものを少女から感じ取る。 何もかもを見通している支配する側の考え方の片鱗が一瞬見えた気がした。 「今度は是非ゆっくりとお話をしましょ?」 少女は何もかも見透かしたように、目を細めた。

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