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朝食の誘い1

レオニードの国で、貴族が朝食を共にするのは家が認めた伴侶だけだ。 といっても、それをレオニードが学んだのはつい最近の事だ。 レオニードは貴族では無かったし、伴侶もいない。 母が父の元を訪れて朝食を一緒にとったのかそうでないのかさえもレオニードは知らないままだ。 だから、劉祜に朝食を共にと言われた時に、彼の意図が分からなかった。 「この国には朝食は特別な意味が?」 レオニードがたずねると、奉公人達は「暗喩の様なものはございません。」と答える。 けれど、そう言った後口ごもるのを見て、レオニードはああと思った。 態々どうでもいい人間と朝食は取らない。 どの国でもそのことは変わらないのだろう。 この国に来て今まで誰かと食事を共にしたことのないレオニードはだれにとってもどうでもいい人間として暮らしてきた。奉公人はそれを直接伝えるのかを迷ったうえでうまく伝えられなかったのだろう。 「服を選んでおいて欲しい。」 断るつもりは元々なかった。 だから、そう伝えると「かしこまりました。」と頭を下げられる。 何故突然劉祜がそんなことを言い出したのか分からなかったし、今まで彼が朝なにをして過ごしているかも知らない。 興味を持てるだけの余裕はなかった。 彼が食事を誰ととっているのかさえレオニードは知らなかった。

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