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朝食の誘い4

この為に朝食に誘ったのだろうか。 馬で遠乗りをすると手紙を寄こせば充分に思える内容だった。 別に断るという選択肢すらないのだから、態々こんなところで誘う理由がない。 「これ、美味いだろう?」 一瞬いつもの劉祜の様に見えた。 けれど、表情は崩れてはいない。 レオニードは劉祜が言ったス―プの様なものが入った器を取って口につける。 透かし彫りの様な模様の入ったキレイな器に入った上品な色をした食べ物だった。 ほのかな甘みがあり、それはデザートの一種の様だった。 思わず器を見ていた顔をあげ劉祜を見る。 目が合った劉祜は一瞬目じりを下げた、気がした。それはレオニードだけにそう見えたのかもしれない。 けれど、一瞬優し気な表情をしたように見えたのだ。 ただ一緒に美味しいものを食べたかっただけなのかもしれない。 そこまで考えて、それはまるで大切な人に対してすることだと思い至る。 レオニードは劉祜の伴侶だ。 人質として最低限必要な人間なのかもしれない。 けれど、何故大切な人を連想してしまったのか。 レオニードは自分自身の思考の飛躍に内心戸惑う。 「馬を一頭贈ろう。」 そう劉祜が言う。 「ありがとうございます。」 レオニードは頭をさげながら、もし劉祜に大切にされているのなら、それを嬉しい事として受け止めている自分に戸惑っていた。

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