66 / 124
誓い1
公私混同という言葉がある。
いったいどこからが公で、一体どこからが私なのだろうか。
劉祜にとって私なんてものは果たしてあるのだろうか。
レオニードは馬に乗りながら視界に入る護衛の人間を眺める。
皇帝が個人として馬を駆る。
けれど、それは本当に個人にはなり得ないのだ。
彼がレオニードの部屋に来た時も、誰かが皇帝の安全のために監視していたのかもしれない。
勿論レオニードもプロだ。気配があれば気づいた筈なのだが、これだけ始終監視されていると自分の感覚が怪しいのではとさえ思ってしまう。
それくらい道中は常に護衛が何人もぴたりと張り付いていた。
「これでも宮殿よりは随分人数は少ない。」
劉祜は言う。それから、レオニードの寝室に直接許可なく監視は置いていない旨を伝えられる。
別にもう監視されていることの不快感を伝えるほど知識が足りない訳ではない。着替えの手伝いを断った時のレオニードとは違うのだ。
「これを確認させるために、態々誘ったのですか?」
レオニードが聞くと劉祜は「いや。」と答えた。
護衛が付いているということを教えるために誘われたのだと思ったけれど、どうも違うらしい。
「この先に主に鷹狩用に使っている離宮があるんだ。」
そこには人を近づけない様にしている。
途中に、湖もあって気に入ってるんだ。
劉祜は屋敷の中には警護の者すら入れない事になっていると笑った。
密約を結ぶにしろなんにしろ、人の出入りを厳重に管理できる場所は必要なのだと言った。
そういう場所が何か所かあってそのうちの一か所に案内してくれるということらしい。
レオニードがその言葉で思い浮かんだのは、自分が劉祜が暴虐王ではないと知る数少ない人間だという事だった。
知られてしまったからには、となることに不安を感じた時もあったのに、もうそんなことはまるで思い出せない。
殺すだけなら別にここまでくる必要も無いのだ。
益々レオニードは遠出をしている理由が分からなくなった。
ともだちにシェアしよう!