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誓い6

劉祜に跪かれて、レオニードは驚く。 なんの脈略も無かった様に思えた。そもそも目上の人間が膝をつくこと自体あり得ない。 「な……にを?」 声がかすれる。なんといって声をかければいいのかが分からない。 のどがカラカラに乾いてる錯覚がするようだ。 それなのに劉祜はレオニードをみて微笑んだだけだった。 劉祜の笑みを見てレオニードは唐突に、ああ、これは騎士の誓いの儀式の様だと感じる。 けれどあれは王のやることではない。 王は傅かれる存在であって、傅く存在では無いのだ。 「愛してる。」 それ以上に、言われた言葉の意味が分からなかった。 だって、自分には愛される様な要素が何も無いのだ。レオニードは驚愕に表情を染める。 「だから、終わりまで共にいて欲しい。」 レオニードはもう、その意味が分からない程愚かでも、世間知らずでも無かった。 劉祜は終わりがあると伝えている。 それが人質関係の終了を示唆しているのか、それとも暴虐王としての圧政に限りがあると言っているのかまでは判断できないけれど、それでもその時まで一緒にいてくれるというのだ。 もしかして暴虐王の終わりは彼の人生の終わりなのかもしれないとさえ思ってしまった。 それは、劉祜の誓いなのだろう。 レオニードの手を取ると、その甲に口付を落とす。 じわじわとした熱が体に広がる。レオニードは自分が真っ赤になっているのに気づいていた。 こういう時、どう返事をしたらいいのかは分からない。 レオニードはしゃがみ込むと劉祜と同じ視線の高さになる。 「願わくば、俺が悪逆非道の王妃にでもなんにでもなって、少しでもあなたと共にあることができますよう。」 劉祜は面白そうに、嬉しそうに笑った。 「少なくとも、アンタの盾になろう。 あんな、命を狙われ続ける事に慣れない様に。」 せめて、その位の事はしたかった。 戦う以外のことをレオニードは知らないけれど、それだけは少しだけできる。 レオニードは首にかかる首飾りを取ると、劉祜にそれをかける。 「これは?」 「うちの王族の結婚の儀式です。」 もう、生れた時に石を握って生れてくる王族も少ないと聞く。失われてしまった儀式だ。 おとぎ話の中だけの儀式になってしまったそれは、愛する人に奇跡の石を渡す。ただそれだけだ。 奇跡が実際起きたと聞いたことは無い。 普通に王族の伴侶が王族よりも先に死んでいった例も多い。 けれど、今のレオニードに誓いの証となるものは他に何も無かった。 「貰ってください。」 きっと奇跡があなたを守ってくれるとは言えなかった。 劉祜に、そんな実在するか分からない言葉は不要だとレオニードは思った。

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