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奇跡2

◆ 奇跡は起こるなんてあの時は軽々しく言えなかった。 あの、地下の少女を見た後、実父に確認の連絡は入れた。 一応帝国に嫁いだ王族ということで丁寧な返事をもらってはいた。 大分前に途切れてしまったおとぎ話の様だった。 書簡の内容を事前にチェックされたのかは知らない。 封蝋を開けられた気配は無かったが、その辺を上手くやる方法はいくらでもあるだろう。 実際に奇跡を試してみる気も無かった。 というより、昨日までは試しようも無かった。 発動条件だって分からなければ、どの程度のものから身代わりになれるのかさえ分かっていないのだ。 けれど、突然痛み出す腹を見て、それはすぐに分かった。 先ほどまでの甘やかな痛みと程遠い痛みに襲われてレオニードは腹を確認する。 すぐにジワリと赤いものが絹の寝間着にシミを作る。 まずい。 それが尋常ではない事態を表しているのだとレオニードはすぐに気が付いた。 ふらつく足でそれでもレオニードは一歩一歩部屋の外へと進む。 奇跡というものが、一体どれくらいのものを代わりに引き受けられるのかは結局分からなかった。 出来ればすべてであって欲しいとレオニードは願う。 指先が冷たくなっている気がするがそんなことはどうでも良かった。 昨日屋敷の中を風呂を案内されるついでに説明してもらっていて良かった。 恐らく朝食の準備をしにいったであろう場所に一歩一歩進んでいく。 腹のあたりが血で|滑《ぬめ》っている気がしたが、それよりも早く劉祜の状態が知りたかった。

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