86 / 124

許し2

◆ 目を覚ましたレオニードはあたりを見まわす。 そこは知らない部屋だ。 けれど、豪華な調度品と、この部屋が纏っている雰囲気でここがどこなのかはすぐに分かった。 落ち着いていて、それでいてシンプルな内装で思い浮かぶ人物は一人だけだった。 劉祜の部屋だ。 一度も入ったことは無いがここは劉祜の部屋なのだろう。 作法として王の部屋に自分がいていいものなのかは知らない。 王になった時の作法は教わっているが、そういう作法は断片的にしか教わっていない上、それを男であるレオニードに適用していいものなのかも不透明なものが多い。 けれど、ここに俺を連れて来たのは劉祜自身の意思だろう。 自分の体は大丈夫かとレオニードは腹に触れる。強か痛くて思わず顔をしかめた。 起き上がれるだろうか。 人を呼ぶ方がいいだろうか。 今はどういう状態なのだろうか。 劉祜は大丈夫だろうか。 あれからどのくらいの時間がたってしまったのだろうか。 そう思って何とか体を起こしたところで悲鳴のような声がする。 「レオニード様!!」 ユーリィだ。 持っていた布のようなものを落として、それからレオニードの元に駆け寄る。 「誰か!すぐに陛下を!!」 ユーリィは扉に向って叫んだ。 「あれから、どの位経っている……? それよりも、あの人は――」 口の中が乾いてしまっていて上手く言葉が紡げない。 咳き込んだところで慌ててユーリィがレオニードに水差しから移したコップを差し出した。 それを一気に飲み干す。 「陛下はご無事です。 レオニード様が全く目を覚まさないので、私はっ……」 嗚咽をもらしながらユーリィが言う。 思ったよりも時間が経ってしまっているのかもしれないとレオニードは思った。 バタバタと騒がしい音がする。 執務用の衣をまとった劉祜が息を切らしてこちらに駆け寄ってきた。

ともだちにシェアしよう!