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許し8
◆
晃と話すために劉祜が用意してくれた場は宮殿内の簡素な部屋だった。
劉祜も必ず同席させることが、彼の出した条件だ。
こんな時どんな格好をすべきかという常識もよく分からない。けれど、皇帝の殺害を企てた人間と会う時にふさわしい恰好は? と聞くわけにもいかなかった。
劉祜が生きて欲しいと願っている人間なのだ。
細心の注意を払いたかった。
結果、あまり仲の良くない貴族と会うという事と、威圧感のない物という指示で選ばれた服を着ている。
奉公人たちは怪訝な顔をしつつもきちんと仕事をこなしてくれた。見るからに無難を絵にかいたような装いをしてレオニードは晃を見る。
目の前に入ってきた晃は憮然としている。
「あんさんの所為で計画は台無しですな。」
最初に口を開いたのは晃で、そして嫌味だった。
相変わらずの様子に、愛する人をて手にかけようとしてる男なのにほっとしてしまう。
それで面倒になって、一歩一歩晃の前に近づく。
本当はきちんと皇帝の伴侶としての責務を果たすべきなのだろう。
貴族としての話し方も少しだけ覚えた。
立ち振る舞いの訓練も受けている。
だけど、晃は貴族として劉祜を討とうとしたのではない。
一人の男としてやったことなのだろう。
劉祜は部屋の壁際でこちらを見ている。
晃が何を言おうが話に入ってくるつもりは無いのだろう。
ふう、とレオニードは息を吐いた。
それから、晃の脇腹に強か蹴りを入れた。
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