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王の条件、英雄の条件3
「あなたが王でありたいと願っているのに、思い付きでこんなことを言ってすみません。」
レオニードは劉祜に向って頭を下げた。
劉祜は、部屋の隅で晃とレオニードの様子を見ていたのに、一歩また一歩二人の元に近づいてくる。
多分、あの時と一緒だ。世界のルールを知らない餓鬼の戯言の様な物なのかもしれない。
だけど、決まりに縛られて友を手にかける以外の道しか残されていない今の状況よりはまだマシな提案だと思った。
劉祜はレオニードの髪に触れる。
それから「それで、レオニードの母国はどうする?」と聞いた。
「それは、次の皇帝が上手く取り計らってくれるものと存じます。」
その前提だ。
現状でもレオニードが人質になっている見返りが大してある訳ではない。
レオニードは自分の故郷が好きだった。
だから、そこは新たなる王に何とかしてもらうしかない。
そこは最低条件だ。
けれど、自分の人質としても価値も知っている。
レオニードが死んだことになっても世界は変わらない。
極端な話劉祜が気まぐれで、レオニードを殺したとしても世界はそのまま歩みを止めないのだ。
殺そうとした側と殺されようとした側。
近くで一緒に生きていけるものだとはレオニードにはどうしても思えなかった。
お互いに腹に許せぬ気持ちをため込んでいることがありありとわかってしまうのだ。
激情に任せて劉祜が晃を殺していなかったとしても、もう背中を預けられるとは思えなかったのだ。
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