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エピローグ1
◆
悪辣非道な王様とお妃様の手から国を救い出した将軍と伴侶のお二人は国家を安定させようと尽力されている。
そんな噂を聞きながらレオニードは酒屋で酒を購入していた。
「それが、そのお妃様っていうのがまた傾国という言葉を絵にしたような人だったらしい。
男だったって話だけど、それはそれは美しかったって話だ。」
そう、兄さんと同じ銀髪だったらしい。
「まあ、兄さんは美人っていうのとは少し違うって感じだな。」
わはははは、と声をあげて酒屋の主人が豪快に笑う。
「そんなことないよな? リュウ。」
レオニードは振り返って連れの男に話しかける。
リュウと声をかけられた男、劉祜はレオニードをみて微笑む。
「俺も結構美人だろ?」とレオニードが言うと酒屋の主人はさらに大きな笑い声をあげた。
劉祜は皇帝であった時と髪形も服装も何もかも違っている。
レオニードも軍人だったころの恰好と、刈り上げた髪形に戻っている。
誰も二人を暴虐王とその伴侶だとは思わない。
「そんな事よりも……。
この山に魔獣がいるって聞いたんだけど。」
劉祜が気軽な雰囲気で酒屋に話しかける。
酒屋は少し驚いてそれから返事をした。
「ああ。でもここ数日のことだ。
兄さんたち旅の人だろう? よくそんな事知ってなさんな。」
昨日、薪集めにいった爺さんが、山の東側で魔獣を見て慌てて逃げて来たって話だ。
珍しがられて、怪訝に思われるかと一瞬身構えそうになったが、杞憂だったようだ。
酒屋の主人は相変わらず気楽な調子で魔獣がいつどこで目撃されたかを話している。
レオニードと劉祜が顔を見合わせる。
それから、お互いにニヤリと笑った。
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