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番外編:ユーリィ
※ユーリィ視点
僕は彼の従者であったことを、勝手に誇りに思っている。
◆
僕がこの国に来ることになった時、僕は一人ぼっちだった。
貧乏くじを引いたと言われていたのは知っている。
だけど決められたものを覆すだけの力は無かった。
反対をしてくれる家族もいないし、一緒に悔しがってくれる友達も、未来を語れる恋人も何もいないのが僕だった。
この婚姻のために王族となった人間の身の回りの世話をする。僕に教えられたのはそれだけだった。
事前に勉強させてもらえたことはほぼ何も無かった。
貴族のことも、王族のことも、家事全般の知識でさえ僕にはほとんど何も無かった。
一応親は貴族だったらしいということは知っていても、僕には何も無かった。
何も知らない僕と出会った彼は、優しい笑顔で「これから、よろしく。」と言ってくれた。
僕は、今まで誰かに認められたことも大切にされたことも無かった。
僕を必要としてくれる人もいなければ、誰かにまともに褒められたことも無い。
だから、優しい言葉も、ねぎらいの言葉と共に渡された砂糖菓子も何もかもすべてが特別だった。
初めて誰かから僕という人間が認められたような気がした。
異国の地の人質。
歪な関係ではあったが、穏やかな日々が続くものと思っていた。
「ユーリィは、俺では無くて別のひとの世話して欲しいんだ。」
最初その言葉の意味が分からなかった。
だって、僕がいなければ彼は孤立無援になってしまう。
僕たちの国から来た人間はそもそも誰もいないのだから。
そんな事僕の主だって分かっている筈なのだ。
だけど、申し訳そうな、それでいて覚悟を決めた彼の瞳をみて言い返すのをやめた。
あの時僕が言い返していたらと後になって時々思う。
言い返せていれば、せめて別れの言葉を言う事くらいできたんじゃないか、なんてそんなことを思ってしまう。
あの人はあの場所ですべてを覚悟していたのだろうか。
僕にはわからない。
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