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第4話 ★鷹藤朱雀side→
「…意外とちゃんとしてるって安心した。
色々失礼な態度をとって申し訳ありません
でした。」
Dom専用のカフェ。
俺が彼『斎藤 忍』に会いたいとアポを取ったのは3日前。
彼のプライベートな連絡先を知らない俺は、彼のクリニックに連絡を入れ、会いたいと伝えた。
要件は伝え無かったが、俺が彼に連絡を取ると言う事は涼太の件しかないと分かったんだろう。
何も聞かずに了承してくれた。
しかし、「意外と」とは…失礼だな。
「僕、涼太の事気に入ってたんです。
今でも大切にも思ってる。だから、
あなたなりの大切さで良いので、あいつの事
大切にしてやって下さい」
俺が彼を呼び出したのは、プロDomの資格返納に関して質問をしたかったからだ。
それを聞いた時、目の前の男は大きく目を見開きひどく驚いた顔をしたが、納得した様に頷き質問に答えてくれた。
プロDomの資格返納に関しては手続きは非公開になっていた。
それはプロDomの必要性と常に付き纏うプロDom不足から来ている。
Domは優秀な者が多いが、有能なDomはわざわざ興味もないSubの面倒を見ようなどとは思わない。
Subを加虐したがるDomは多いがSubに必要なのは暴力だけではない。
あとは階級の問題があり、SやSSのDomは更に貴重な存在だった。つまり減らしたくないのだ。
取得も資質が占める割合が多い為困難な分、職に付くには至極有利な資格だが、返納する時には限りなく面倒な手続きが必要となっていた。
なので、手っ取り早く返納できた人間に聞く事にした。
俺は涼太をClaim にしたいと考えている。
その気持ちを伝えるには一番確実に誠意を示せる行動だからだ。
この目の前のどこか俺に対して軽い態度をちらつかせる男にもその偽りのない真心を示したいパートナーが居るのだと思うと、100歩譲って敬意を示す気持ちにもなる。
そのくらい返納は大変な事でも有り、意味のある事だった。
にしても──
「…普通に話してくれ。気持ち悪い…」
「うっわ、ひっど!」
その声は言葉の割に明るく、表情も笑顔だ。
彼は本当に優秀なDomである。
俺はDomとして彼を認めている。
そして、彼も俺を認めてくれているのが分かる。
『相手を正確に分析し見極め、公平にジャッジする』
プロDomに必要な気質だ。
だから、意地を張る必要もない。
「君の言葉に俺がGlareを使わなかった事を感謝して欲しいな」
俺もニヤリと笑って見せる。
ここはDomカフェ。
DomカフェはDomが唯一マウント取り合うGlareを無条件に使っても良い場所。
ただし、暴力と精神や命に関わる圧力を使わないのが条件だ。
つまり、分かりやすく言うとアームレスリングカフェのようなものだ。
入店の際に身分証明書を提出し、プロDomは免許証提示も必要になる。
勿論、何かあった際に不利になるのはプロの方だ。
彼には最初からここでの待ち合わせと伝えてあった。
彼が気に入らないと判断した時に心置きなくGlareを使え、正当なジャッジメントがいる場所と言ったらこんな所くらいだ。
故に、カフェの内部はオープンホールと個室に別れている。
個室はカラオケルームより監視カメラが多く設置されていた。
秘密の話をするには不向きだが、だからこそ誠意は伝わりやすい。
彼は涼太の事を『気に入ってた』と過去形で言い、『大切に思ってる』と現在進行形で言う。
いつも思うが、本当に目の前の精神科医の言葉の匙加減は絶妙だ。
そのケンカを売らない程度の牽制は涼太を大切にしている事が充分に伝わるが、今のパートナー俺にギリギリ不快感を与えない。
まぁ、俺用の言葉のチョイスだろう。
「ぇーこのくらいじゃ怒らないでしょ?
涼太が鷹藤さんに会う度に僕に『鷹藤さんが
優しいんだ!』とか、『鷹藤さんのコマンド
が、気持ち良すぎてどうしよう』とか
夜中に連絡してくるんですよー」
彼が口を結ぶ。
まだ、Glareは出してない。
気配で察したんだろう。
「さすがSSは嫉妬深いですね。
でも、こちらもハニーと『いたしてる時』に
屈託なくコールしてくるあいつに付き合って
るんだ。
このくらいの愚痴聞いてくださいよ」
「君のパートナーには同情するよ」
いい具合に焦らし要素に使われているんだろうなぁとため息を吐く。
店を出て、彼が乗る駅と俺の車を停めた駐車場まで歩いていると彼が「あっ」と声を上げた。
彼を見ると指を指す。
その先のカフェの窓側の席には涼太と…綺麗な男の子が楽しそうに談笑していた。
殺気立つのが自分でも分かった。
「あれ、僕のClaim ですよ。」
クスッと笑って俺を見る男に、俺はきっとバツの悪そうな顔を見せていた事だろう。
店内に入る。
そこは普通の喫茶店だった。
まぁ、Sub同士ならこういった店の方が安全だし、何よりカフェとしても質が高い店が多い。
あまり、こういった店とは縁のない俺が店内を見回すと俺の腕を忍が突く。
しーっと口元に指を当てていた。
二人に近付くと会話が耳に入ってくる。
「りょーくんまだ身長の事気にしてるの?
男性の平均身長3cmオーバーしてるだけ
でしょ!気にし過ぎだと思うよ?」
「そうは言うけど、俺が好きな体に変えて
貰えるなら間違いなく縁 さんの体を貰う。」
相手の子に涼太が力いっぱい言うものだからつい言葉を挟んでしまった。
「必要ない」
「忍に、鷹藤さん?!」
隣の忍が嫌な笑顔を俺にむけた。
「僕のかっちーっ」
勝ち誇った様に気安く俺の背中をぽんぽん叩く。
思わずチッと舌を鳴らしてしまった。
涼太は俺は疑問符いっぱいといった顔をしていた。そんな涼太も可愛いと思う自分に気付く。
出会って日は浅いが俺の中で占める涼太の存在はかなり膨らんでいた。
「あーあ、りょーたは相変わらずおマヌケさんだね。自分のDomより先に他のDomの名前呼ぶなんてぇ…これは後でお仕置き決定だねっ」
忍のウインクに涼太の顔がサッと青ざめる。
まぁ、気分は悪いが、お仕置きする程俺も心は狭く無い。
まぁ、涼太がお仕置きして欲しいなら喜んでネタとして使わせて貰うが…
そうのこうの考えている内に綺麗な顔立ちの男の子が助け舟を出す。
さすが忍のパートナーだけあって気が回る。
ちゃかりパートナーの横に腰を落ち着ける忍に内心でため息を吐く。
ここは居座って良いところか?
どう考えても大切な会話の邪魔になるだろう…
視線に気づき涼太を見るとおずおずと奥に詰め席を空けてくれた。
結局、俺も座る。
どうやら2人は涼太の就職活動の話をしていたらしい。
Subの就職募集数は少ない。
少ないと言うか、トラブル防止の観点から表立っては書かれていないが面接の段階で重されることが多いのが一般的だ。
何故俺に相談しなかった…と言う言葉が一瞬頭を過 ったが、出会って然程経っていない事もある。
仕事の関係で会うのも夜が多く、自分自身仕事の話もプライベートな話とする事が無かったことに気付く。
頬を染めながら、俺に会う時間か減る事を気にして就職先を探していると言う涼太に愛おしさが込み上げる。
もっと一緒にいる時間が欲しい…
誰かに涼太を任せたく無い。
俺のDomとしての保護欲が疼いた。
だったら…
「だったら…うちに来い。託児所なんだか、
人を募集している」
「おおお〜」
驚いている涼太に忍が感嘆の声を上げる。
「『おおおーっ』じゃないっ!俺の卒業来年の春だよっ」
忍に喰いつくのに、俺には無反応なのか?
すぐ就職する訳じゃないから無理っと言う涼太に少しムッとする。
涼太は俺と居たくはないのか?
「問題ない。託児所の設置を来春にすれば良い良いだけのことだ」
まぁ、いくつかある案件で、優先順位から度々後回しにされていたが、スタッフの中にもスタッフ用の託児所は希望が多かった。
スタッフの募集の話も出ていたので渡に船だ。
よし、この話は院の方も進めておこう。
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「ああ、涼太。昼間の件だが、履歴書をここに送っておけ」
あの後、忍たちと別れた俺は涼太を連れて自分のマンションに戻った。
部屋に着くと、上着から名刺ケースを取り出し、自分の名刺を涼太に渡した。
「鷹藤総合病院?!」
涼太が驚いた様な声を上げた。
「鷹藤さんの…ご実家?」
『聞いても良い?聞いても良いの?』とこちらを伺いながらも興味が勝ったのかおずおずと聞く涼太は、子リスの様で可愛い。
「叔父の病院だ。実家は別…。」
「ぇ?わっ、でも身内でしょ?スゴッ
ぁ、でも…俺、面接受かる自信なくて…
推薦とかして貰ったりしたら鷹藤さんに
迷惑かけないかな…」
何かずっとモヤモヤしている理由が漸く分かった。
「涼太、【Kneel 】」
涼太は素直に俺の足元にお座りした。
『Good boy』と涼太の少し硬めの髪に指を入れ頭を撫でる。
「涼太、心配するな。推薦する訳じゃない。
俺はそこの院長だ。採用を言い渡すだけの
事だ」
うっとりした面持ちでされるがままになっていた涼太がバッと顔を上げた
「そ、それは…職権濫用…て、やつ?」
涼太があわあわとパニックっている。
涼太は体は大きいが気が小さい…まぁ、そこもまた可愛いんだか…
「そのくらいは濫用とは言わない。それに
託児所開設とスタッフを探していたのは
事実だ。」
俺は少し離れたソファに腰を下ろす。
勿論『Come』と涼太も呼ぶ。
俺が動いてもお座りした場所から呼ぶまで動かないのは中々良い。
Subに与えるコマンドは至ってシンプルだ。
Kneel は『お座り』『跪け』の意味をもつ。
正座のお尻をぺたんと床に付けて座るのが
基本だが、男のSubは股関節が硬い者も多いのでそこは当人の間で決め合う。
Kneel基本中の基本なコマンドだ。これが出来ないとまずペアとは言えない。
あと、今使ったCome は『そのままおいで』の意味を持つ。 Kneel中であればKneelの姿勢のまま、Crawl であれば這えと言う事なので四つん這いのまま移動させる事もある。
ここら辺はそれぞれ当人同士の嗜好によって話し合いで決める。が、うちはそのまま立ってこればいいと言ってある。
勿論、お仕置きの時は四つん這いで歩かせるつもりだ。
普段させる気にならないのは四つん這いで歩くのが結構大変で股関節や膝を痛める事もあるのでそこは気遣う。
他にもStay と、俺がよく使うのはLook。まぁ、そのまま『見ろ』と言う意味だが、どちらかというと『目を逸らすな』の意味で使う。
Subの視線・顔の向きを固定するために使うので、LookからのSayが定番。後はstrip 。これも『脱げ』とそのままの意味だが、Domによっては服を脱ぎキチンと畳んでPresent迄がセットの場合もある。
ああ、Presentは局部を晒す事。
KneelからのPresentはペッタン座りのまま両手を少し後ろに突き腰を浮かせペニスとアナルを晒す姿勢の事だ。
この姿勢はどのDomも好む。むしろこれをしないSubを持つDomはSubに受け入れられてない事になる。
付き合い始めの間無しは出来ないカップルも多く、相談に来る者たちも少なからずいる。
特に、前のパートナーが粗暴だったSubに出来ない事が多いく、克服の為のトレーニングコースに通うSubやそれに付き合うパートナーのDomも少なくはない。
俺的にはStripからのKneel 、でPresentがDom心をくすぐられる。
ともかく、最初の内相性の見極めが大切だ。
基本的にはSubはコマンドを欲しがるが、出来ないことを言われてしまうとSub drop してしまい神経を病んだり意識が戻らなくなったり、最悪は命を落とす者も居る。
だからこそ、Subは行為を強制的に止める言葉 で守られている。
唯一Domを止められる言葉だが、これも穴だらけで、暴行 にSafe wordなど存在しないからSubに取っては生きにくい世の中なのだ。
俺に言わせれば見極めの問題なので、付き合い始めならば仕方がないとは思うが、自分のSubにsafe wordを使わせる事自体が恥だと思っている。
commandにはお仕置き用の言葉もある。
本当にできない事は事前に話し合っている。
プレイの中で出来ないことを減らす調教もあるが、基本的には愛があっての関係なので、そこはあくまでも『常識内』でとされていた。
何事もそれがエスカレートするのが怖い。
だからこそ俺は今自分の愛すべきパートナーに色々なcommandを与えて、彼の嗜好を探っている。
ある意味真っ新 に近い涼太は染め甲斐がある。
昔の俺なら仕事でも気を使って、プライベートでまで躾なんて出来るかって言っていた事だろう。
comeでKneelまでしてしまう涼太はやはり可愛い。
だが、キョロキョロ姿勢を泳がせるのはいただけないな。
「涼太?何を考えてる?」
「ぇ?あ…、えと……あぐぅっ」
返事をしない涼太にGlareを向けた。
本来のGlareからしたらなんの圧力も持たないくらいの力だが、俺色を覚えさせる為に慣らしていく。
その表情からすると喉が渇きを覚え、息苦しくなっている事だろう
「言えないことか?」
首を横に振る涼太に、Glareを弱める
「『Say』」
自主的に言わせない所もあるが、commandを言ってやる事も必要なスキンシップなので、涼太にcommandをやる。
「カッコ…いい…と」
「は?」
「白衣…も、かっこ…良さそう、とおもった」
こいつは…
「お前は…」
『欲しい』と言う衝動に俺は涼太の顎をとり唇を奪う。
骨の髄までしゃぶり喰らいたくなる。
戸惑い口内で彷徨う下を絡みとり吸い上げ、噛み付く。
ふあっと息をつく吐息ごと飲み込む様に貪り喰らうと涼太が飲み込みきれなかった唾液がこの顎を伝う。
涼太の俺にしがみ付く腕がだらりと落ちるのを感じ、腰を抱き足で固定して涼太の頬を叩く。
「キスも慣れてないのか?」
「くはっ…た、鷹と…さん、はげし…過ぎ」
ゼェゼェと肩で息をしながら意識を手放した涼太が再度俺にしがみ付く。
「ご、めん…俺、こう言うの、ホントに
経験なく…少なくて…ひぃっ」
Glareを強めた。
…キスがか?それともこの手の流れか?
媚びるにしても程がある。
俺は恋人に媚びられるのが最も嫌いだった。
「こう言うのとは?」
「キ…キス」
「初めてのキスは?」
「い…ま…です」
は?
真逆 だろ?
いや、この子は初心 だと忍も言ってたな。
それにしたって…
「いや、怒らないから本当の事を言え」
「ぇ…ホント、です。
その…command欲しくて…その…ヤリモクで
一度ママのとこじゃないBARに行って知り
合った人とプレイした事は有ったけど、
その時もキスは好きになった人とだけと
思ってたからNGだしてたし、本番も勿論なし
だったし…だったらってcommandやるから
しゃぶってって言われて、店の裏でしゃぶら
されたんだけど、思いの外…気持ち悪くて…
俺、思いっきり吐いちゃって…相手を
怒らせてめちゃくちゃにボコられちゃって
結局病院に運ばれて大変だった時期があった
んで…そこからは忍がケア程度に付き合って
くれてたって流れだったから…」
こいつは…ため息を吐きそうになり飲み込む。
実はこの話は知っていた。
忍から前回クリニックに行った時に本当は個人情報に抵触するんだけど、貴方なら大丈夫でしょう。と涼太がトイレに行っている間に聞かされていた。
それは、有難い情報で、俺の覚悟が固まった瞬間でもあった。
実の所…性犯罪はUsual女性以上にSubの男性が暴行を受ける事が多かった。
Subの女性はガードが硬く防衛策も取っている可能性が高く捕まった際の賠償も莫大だ。
それと女性は孕む。
ただのレイプならGlareで弱ったSubの男性を組み敷く方が訴えられる事も少なかった。
気に入れば使い捨ての道具として飼えるからだ…。
そう思えば、この子が真の被害者にならなくて本当に良かった。いや…被害は充分受けてしまったか…
「中学とか高校では?」
「あ、俺Sub性が出たのが高二の冬で、
男子校だったけど、人に言えなくて…
18歳過ぎるまでは出会い系アプリも使え
なかったから…」
自嘲気味に笑う涼太。
こんな顔をさせたかった訳じゃ無い。
パートナーだからと言っても立ち入ってはいけない事はある。
気をつけていたつもりではいたが、欲するあまり踏み込みすぎた自分に気付く。
「朱雀…だ。名前で呼んでみろ」
「…っ!」
「…どうした?」
「こ、恋人…っぽいって…。う、嬉しく思い
ました!」
先程からのGlareが効きすぎたのか涼太が早口で返事をした。
俺は年甲斐もなく、何を焦っていたんだ…。
「…俺たちはもう恋人だろ?」
涼太の額にキスを落とす。
「ごめんなさい」
腕の中の涼太の緊張が解れたのが分かったが、何度も教え込む様にバードキスをしながら名前を呼ばせる。
「俺は、お前のテンポに合わせる所からの修行だな…今度は何を考えた?」
俺の胸に頬を埋めていた涼太の手が俺のモノをやんわり握り込んできた。
びっくりして引き剥がして見たが、その顔はふわふわと気持ち良さそうだった。
涼太は快楽に弱い。体が快楽に慣れていない。
commandにすら酔う事がある。
だからここ数ヶ月は俺のcommandに慣らす様に躾をしていた。
今まで手掛けて来たどのSubよりも時間をかけて、ゆっくり俺の色に染め上げ様としていた。
「commandが欲しいのか?」
怒っては無いとその頭を撫でる。
涼太と付き合いはじめて最近気付いた事がある。俺は涼太の頭を撫でるのが好きだった。
この頭の形が好きな様だ。
俺の言葉に首を振る。
「Domは怖くて…、体はcommandは欲して
欲しくて仕方なくなるのに、心はどうしても
何処かでDomを怖がってて、それが相手に
分かると喜んでると思って又レイプまがい
な事されそうになるんだって…ずっと
思ってて」
涼太の言葉に息を呑む。
が、口は挟まず涼太の言葉を聞く。
これは涼太と今後付き合っていく為の通過儀礼だと思って聞く姿勢に徹する。
「だから、こんなに優しくして貰うの
初めてで、幸せすぎて。もぅなんだか…
恋人っぽくて…照れ臭くな…って」
D/Sは婚姻ではない。D/Sは生きて行くために必要な生理現象だ。
だから、D/Sとは別に結婚する者も多い。
寧ろ、そちらがスタンダードだった。
だが、それが受け入れられない俺はSubと恋人を分けて考える事が出来なかった。
俺は自分のSubには全ての愛情を注ぎたいDomだ。勿論相手の全ても欲しい。
SSクラスのくせにハードなSMプレイよりも相手をドロドロに自分の腕に堕とし入れたいタイプだった為、被虐心の高いSSクラスのSubには物足りなくなり愛情を感じないと言われ破局する事が多く、何より庇護欲を駆り立てる様な小さな女の様に小綺麗なSubに趣旨はむかなかった。
へへへっと鼻を擦り照れ笑いする涼太を俺は抱きしめた。
「お前は、言葉の区切りを気をつけろ。
…可愛すぎて抱き潰したくかる」
怒りが沸きそうになる事もある。心臓が止まるかと思う事もある。だが、結局のところ…
俺を見上げる涼太が可愛い過ぎて何度もキスを落とす。
「名前を呼んでくれ…涼太」
「んっあっ、あっ、す…ざ、さ…」
「目を閉じるな…誰がお前を気持ちよくして
いるかちゃんと見るんだ」
俺は膝に涼太を乗せ、ローションを絡めた指で涼太の後孔を蹂躙していた。
自分で開拓するなんてエロ過ぎだろう。
あの忍はハード系らしいからなぁ
忍の『可愛い』が俺と被らなくて本当に良かったと思う。
向かい合った体勢でずっと前立腺を刺激されていた体はひくつき、無意識にソファを蹴って仰け、その快楽に溺れる様に筋肉ののった胸を反らせ官能に振り乱れる姿は実に唆る。
快楽に不慣れなこの体は受け流す事も出来ず必死に俺にしがみつき肩に顔を埋め「助けてっ」と悦から逃げる様に俺の上で踊る。
『Look』とcommandを放つと涙を流しながら必死に俺を見る。
俺に与えられた快楽だと再認識した身体はより熱を増した。
「『good boy』」
「ひゃ、ひゃあぁ…いっちゃっ、逝っちゃう
から!指っ…指、掻き回さないでぇーっっ」
「良い子。ちゃんと我慢してるんだな…
Attract 。イクのはその後な?」
最初の頃からすると漸く人並みの我慢を覚えた。
そもそも、涼太は健気だ。
媚びるとは違う…どうしたら俺に好かれるかを拙い経験の中で必死に考え受け止め様とするところが凄く俺を興奮させた。
「さっきからお前のおちんちんが可愛く
俺の腹に当たるそれが、Attractか?
さっきから可愛く揺れてるぞ?色もキレイだ
可愛い色だなぁ…」
「言わないでぇっ、感じちゃう!
あっそこっコリコリ、コリコリッ!
んっ、あぁっ!ホントにダメだからっ
気持ちいいっ!ひゃんっ、あっ、ああ!
ダメッダメッ!!すざくさ…やばいっ」
「何がダメ?俺が与えるものを拒むな。
もっと気持ちよくなればいいんだ。」
「やだっ、スペース入っちゃう…もっと
もっと、朱雀さんを感じたい…っあぁああ」
グリグリッと指で前立腺を刺激すると涼太は白濁を撒き散らした。
「ご、ごめんなさいっ」
「可愛い事を言うから達かせたくなった。
可愛くAttractできたな。
俺の指が気持ち良かったんだろ?
『Good boy』良い子だ…可愛いなぁ…チュ」
「朱雀さん…」
申し訳なさそうにしゅんと落ち込む姿が叱られた大型犬みたいで尚の事俺の欲を煽る。
Rewordに気持ち良さげではあるが不満げだ。
そんな涼太の瞼や頬にキスを落としていく。
「俺は逝くなとは言ってないだろう?
俺の手で上手に逝けたな、偉いかったな。」
普通に褒めてやる。その内command無しで脳イキさせたり、嬉ションさせたりしたい。
俺がどんな風に涼太を色付けて行きたいか知らない涼太は無垢な瞳にハッキリと欲情の色を載せて俺に呟く。
「俺…朱雀さんと…一つになりたい…ダメ
ですか?」
「…無理しなくていい…」
男に襲われて恐怖心が拭い切れていない涼太を俺は俺は待つつもりで居たので、まさかそんなセリフがこんなに早く聞けるとも思わず、返答がワンテンポ遅れてしまたった。
「無理じゃなくて、俺がして欲しいんですっ
…俺じゃあ満足出来ないかもだけど…」
最後の方は最初の勢いは無くなり声が小さくなって言った。
「っ?!!」
俺は無言で涼太の手を取り、自分の股間に触れさせた。
「お前の体に触れる度、俺の体もお前が欲しくてこの通りだよ」
俺のそこは固く、熱く、勃っていた。
仕事で幾らSubの相手をしても、相手の後孔を弄ったくらいでこうはならない。
「ぁ…」
涼太の顔が引き攣るのが分かった。
俺のは普通より大きい。涼太の使う玩具より
太いか長いかしたのだろう
「無理しなくて良い。…怖いだろ?」
苦笑しながら頭を撫でる。
それでも涼太の手は吸い付いた様に離さなかった。
コクッと涼太が喉を鳴らすのが聞こえた。
涼太は激しく首を横に振る。
「それでもっ、欲しいんです!」
可愛いすぎだろ
「お前は…それじゃあ…自分の手で出してごらん」
涼太は俺こ膝から降りて膝の間に跪きおどおどしながらスラックスからシャツを抜く。
前のぼたボタンを外し、ファスナーを下ろしていく。
俺はまだ一度も涼太の前で服は脱いだ事は無かった。
涼太が戻れる様に。俺が手放せる様に。
一度レイプされた記憶のある涼太の潜在意識に刷り込まれた恐怖心は同じ患者を何人も見てきた俺にはどれだけ痛ましく腹立たしいものか…だからこそ、俺は最後まで涼太を見守り支えて行こうとと思い、ゆっくりこの恋を焦る事なく育んで行こうと心に決めていた。
同時に、本当に涼太に逃げ道を作ってやっていた。
いつでも逃げれる様に…。
布にくっきり形が浮き上がる俺のペニスを食い入る様に見ていた涼太がそっと又指先で触れる。
「あ、あの…キス、して良いですか?」
表情は見えないが、本人が言うなら大丈夫だろうと俺は承諾した。
下着の上から浮き出たペニスにそっと涼太の唇が落ちる。
唇を押し当てるだけの口付けだが、その熱に己のソコが脈打つのが分かる。
いつの間にかキスではなく、鼻先を擦り付けてくる涼太の刺激に痺れを切らした。
「涼太…直接触って良いぞ」
スペースに入ったかと思ったが、涼太は
俺の言葉に腰のゴムを引っ張ると中から俺のモノを引き出し、俺の息子で頬を打っていた。
その視覚攻撃に俺は冷や汗をかきそうになっていた
「はは…涼太が可愛すぎて…な」
このままじゃ、マズイ事になる。
「『stay』」
『Lick』と言われると思ったのだろう『stay』と言われ戸惑うところが可愛い。
本当にオーラルセックスをしてくれる気でいてくれているのが嬉しい。
サイドテーブルの引き出しからスキンを取り出し涼太に渡す。
「コレを付けろ」
渡されたのを自分のにつけようとする涼太に「違う」とつたえる。
「俺に付けるんだ。それに涼太にソレは大きだろ?」
冗談のつもりで言ったつもりだったが、涼太は笑う事も無くゴムをジッと見つめている様だった…ゴムの付け方が分からないとかか?
「あ…あの…」
ん?となるべく優しく聞いてやる。
「俺…あの、その…キスを…」
「ゴムを付けたら好きにして良い」
「え?」
ああ…オーラルセックスでゴムを付ける感覚がないのか
「感染予防だ。──すまない。
オーラルでもリスクはお前にあるからな。
涼太が無垢でも俺は…仕事で他の子を抱い
ている。勿論ゴムは付けているが涼太が
こんなに早く俺を求めてくれるとは思わ
無くて今月は検査をまだしていないんだ。
明日には済ませるから、今日はこれで我慢
してくれないか?」
涼太は顔を真っ赤にした後項垂れた。
直接的な言葉に羞恥心で赤くなる涼太は本当に可愛いが、今回は少し怖がらせてしまったかな?
「ゴムをしたら大丈夫だ。
勿論…嫌なら辞めても怒らない」
性病と聞いたらそれは怖いだろうな。
ゴムをしたら大丈夫とかどの口が言ってるんだか…その口に入りたい欲望に正直すぎて笑える。
ゴムを手に固まる肩に手を置いて優しく伝えるといきなり袋を破り俺のモノをムギュッと掴みゴムを嵌めたかと思ったら…
「ふはぁっ」
俺のを咥え込んだかと思ったら、涼太はそのまま崩れ落ちた。
マズイッ!
「痛ッ」
喉と顎を片手で支え、もう片腕で肩を引き寄せたらそのまま喉の奥に突き刺さる形になってしまった。
一瞬喉が締り射精感に襲われるのを堪え、俺は自分の親指を涼太の口に挿しこみ半身を引き抜く。
「大丈夫か?!」と覗き込むと涼太はSub spaceに入っていた。
頭を掻き、項垂れる。
ふ…ふははは
笑いが込み上げる。こんな風に笑うのはいつかたぶりだろう。
俺はまだ芯を持つそれを仕舞い、涼太の体を引き上げ、ソファに寝かす。
ブランケットでその体を包みRewordを囁く。
『良い子だね、涼太。気持ちいいか?
Good boy。今日はもうお休み。
明日また笑顔を見せてくれ。
おやすみ、Good boy』
明日はどうしようか。
きっと朝目を覚ましたら驚いて泣きそうになりながら謝るんだろうなぁ
うむ。これはお仕置き案件としよう。
俺は消化不良で逝けなかった割に気持ちはここ数年で一番晴れやかになっていた。
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