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第23話
「あの時、あのノート燃やしてれば良かった」
一葉が俺につきまとっているのは、11月に行われる学園祭で、華道部の出し物に協力して欲しいからだ。
展示発表(紙芝居ならぬ写真芝居?というものらしい)なので学園祭当日に時間を取られる事はなく、事前に衣装を来てシチュエーションに合わせたポーズを取って写真を撮るだけだという。
華道部に男子がいないので、俺とユウリに助っ人を頼むと言うのだが、一葉に見せられたシナリオを読めば助っ人どころか俺たちがメインだ。
「性別に引き裂かれた恋ってなんだよ」
タイトルから怪しさ全開だし、内容に至っては女装子と王子様系男子の禁断の恋ときている。
華道部なんだから、花を活ければいいだろと言えば、撮影シーン毎に花を組み入れるから無問題と返ってくる。
何が無問題だキャスティングから設定まで問題ありまくりじゃないか❗
ユウリが王子様なのはいい。俺でもユウリの王子様コス見たいと思ってしまうから理解できる。
けれど、何で俺が女装子役なのか?
俺が女装したって気持ち悪いだけだろうに。
「ユウリなら、本物のお姫様になれるだろーな」
ユウリの女装姿を妄想してみる。
ユウリなら、衣装一つで可愛い系から綺麗系までイケるだろうし、ナースやメイドも良いかもなんて、ムラムラしてきた。
いかん、ユウリのそんな姿を公開したら、年中彼女欲しい~とぼやいてる非リア男子たちが寄ってくる。
「ユウリの女装は大反対だ」
花壇の手入れをしながら呟く俺に、四六時中張り付いている一葉が、そーだそーだと頷く。
「そうだよ、ユウリに女の子の格好させちゃたら、きっと変な虫が大群で押し寄せるよ」
やっぱな、一葉もそう思うんだ。
一匹、二匹なら俺が追っ払ってやるが、大群は困る。
ユウリの周りに群がる男子達を想像して眉間に皺がよる。
「ユウリがロミオなら、女の子のファンが騒ぐだけだし、野郎連中はユウリのもてっぷりに嫉妬するだけだよ」
そうだな、一葉の言うとおりだ。
ユウリに女装させるぐらいなら、俺がやった方がいいに決まってる。
「と言うことで、暁はジュリエットでいいわよね」
思わず頷きかけて我にかえる。
背後にいたはずの一葉が、期待に鼻を脹らませて、俺の顔を覗き込んでいる。
「だから、俺もユウリもやる気はないし、やる義務もないっつーの」
「ちっ」
俺の言質を取り損ねた一葉の舌打ちが響く。
子供の頃からの付き合いでお互いの思考回路を把握している。俺のユウリへの気持ちを知られているものだから、一葉にいいように誘導されているのは間違いない。
このままでは、いずれ承知させられる気がするのだが、この時の俺は出来る限り抵抗しようと思っていたのである。
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