34 / 65

第22話

「写真撮るだけなんだから、協力してよ」 新学期が始まり、二週間程たった頃から、俺は一葉に追い回されていた。 「断る」 「何で可愛い幼なじみの頼みが聞けないのよ」 授業が終わるや俺の席にやって来ては、協力してと頼んでくる一葉を思いっきり睨み付ける。 「腐った世界に堕ちた幼なじみの頼みなど、聞けるか」 「腐海に散った私に、花を手向けると思ってさ。ねぇ、暁~」 「沈んでろ」 ※ ※ ※ 夏休み後半。 小旅行後の、ユウリは勉強や仕事がギチギチに詰められて(ドSの仕業だ)おり、会うどころか電話で声を聞けたのも数回だけだった。 メールのやり取りだけで、ユウリの顔も見られす、その存在を隣に感じ取れない寂しさが募る。 とはいえ、ユウリの邪魔をする事も出来ない俺は、一葉の部屋でゴロゴロするくらいに暇をもて余していた。 「おい一葉、対戦しようぜ」 勝手知ったるというより、最早第二の部屋と化している一葉の部屋には、俺の持ち込んだゲーム機やら漫画が散乱している。 ゲーム機の電源を入れ一葉も好きな対戦ゲームのソフトをセットする。タイトル画面が表示されても、コントローラーを取ろうとしない一葉に俺はもう一度声を掛けた。 「おい一葉、聞いてるか?」 背後を振り返ると、一葉は勉強机に突っ伏している。立ち上がって様子を見れば、鼾をかいて寝こけている。 「朝から、何書いてたんだろ」 俺が来たときから一葉は、ノートに何か書いていた。 勉強してるわけではないのは、「ぐふっ」とか「ぎゅふっふっ」とゆう気持ち悪い笑い声や、「姫が受けじゃ面白味がないし、王子を受けにすると、キャスティングが」等と呟いている事から想像がついた。 まぁ、こんな感じの時の一葉には、関わらない方が俺の精神衛生上良いと判断して放置していたのだが。 ノートを覗きこんでみたものの、そのページは一葉のヨダレで滲んでいて読むことは出来なかった。 「どうせ、華道部関係の、ろくでもないもんだろうな」 そう検討をつけた俺は、一人でゲームを開始したのであった。

ともだちにシェアしよう!