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第25話
「えっ、マジでOKしたの?」
「したよ。それで暁、どれにする?」
本屋からの帰り道、約束通りユウリがお菓子を買ってくれる。
「じゃぁ、ポッチーで」
「何味?」
「イチゴ」
コンビニの棚に整然と並べられた商品の中から、俺の指定したお菓子をユウリが選び取る。
「了解。払ってくから、先出てて」
レジに向かうユウリの後ろ姿を見ながら、俺はため息をついた。
やっぱり、ユウリは変わった…変わろうとしいているんだ、一葉のために。
何もせずとも、その容姿だけで目立つユウリは、必要以上に注目される事を避けていた。
これまでは文化祭や学園祭等のイベントでは、どんなに頼まれても表に出るような役回りは断っていたし、休み時間でもクラスの友人とばか騒ぎするとかもなく、ひっそりと本を読んでたりする。
友人がいないわけではないが、俺と一葉を別にすると学校以外での付き合いは一線を引いているみたいで、ユウリが誰かと遊びに行ったという記憶が俺にはなかった。
「いつかは帰らなければならないって、セーブしてるのかな」
中学・高校と一緒に過ごして来た俺は、積極的に友人らと関わろうとしないユウリの事を勝手にそんな風に思っていた。そのうえで、そんなユウリが俺とだけは仲良くしたい、一緒にいたいと思ってくれているんだと優越感に浸っていたんだ。
「でも、それも終わりかもしれないな」
ユウリは一葉を好きになったから…。残り少ない日本での生活。貴重な時間なら、俺とではなく好きな女の子と一緒にいたいと思うのが普通だ。
ユウリもその事に気づいているから、一葉との仲を進展させようとしている。
「お待たせ」
コンビニから出てきたユウリがポッチーを差し出してくる。
「ありがと」
受け取って、二人並んで歩き出す。
「なぁ、ユウリ。本当に良かったのか?」
「何が?」
「華道部のやつさ。ユウリが引き受けると思わなかったよ。何か心境の変化でもあった?」
お菓子のパッケージを開け、一本摘まんでユウリに渡す。
「そうだね。あったかも」
ユウリの答えに、ドクリと心臓が鳴った。自分で聞いておきながら、これ以上ユウリの話を聞きたくなかった。これを機に一葉に告白するなんて言われたら、俺はどうしたらいい?
「高校生活の想い出になるかなって」
「想い出?」
「うん。これまでは目立つの好きじゃないから、裏方とかばっかだったけどさ。一度ぐらいは、はめをはずして騒いでみてもいいかなって思って」
そう言ってユウリは寂しそうに笑った。けれど、その時の俺は、まだユウリの恋を応援しなくていいんだと、ホッとするばかりで、ユウリの真意に気づくことが出来なかった。
「いいんじゃない。楽しい想い出にしような」
「本当?じゃぁ、暁も一緒に参加してくれるんだね」
「えっ、いや、それはちょっと…」
慌ててイヤだと渋った俺だったが、結局ユウリに口説き落とされ、部屋で待っていた一葉に「お帰りジュリエット」とニヤニヤ顔で迎えられたのであった。
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