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第26話

結局、一葉の思い通りに華道部の出し物に協力させられることになった俺とユウリは、華道部の部室に連日呼び出されていた。 最初は打ち合わせと称したお茶会で、部員の女の子達を紹介された。一葉と同じ腐女子だから失礼ながら見た目は兎も角中身は残念な娘たちばかりだろうと思っていたのだけれど。以外にも彼女らは、見た目も中身も至って普通の女子高生だった。 何かヤバイことになりそうな雰囲気になったら、ユウリをつれて逃げなければと身構えていた俺も、三日目にはうたた寝するぐらい気が緩んでいた。 というのも… 「これから撮影日まで、お肌の手入れしてくださいね」 華道部部長で一葉の親友だという、玲香ちゃんがマッサージクリームを手渡してくる。 「お肌の手入れって、俺?別に必要ないでしょ」 いつものように淹れて貰った紅茶を飲みつつ、部員の女の子の手作りクッキーを有り難く頂いていた俺は、受け取ったクリームをそのまま机に置いた。 「必要でしょ。暁はお姫様なんだよ」 俺の隣で絵コンテとやらを書いていた一葉が口を挟む。 「撮影時には衣装着るだけじゃなくメイクもするんだよ。肌の調子が悪いとメイクののりも悪くなるからさ」 「そーなの? 女の子って大変なんだねー」 そう言ってみたものの、やっぱり自分には関係無いな~って気持ちが伝わったようで、玲香ちゃんが俺の両肩を捕まえて宣言する。 「私が毎日しっかりと、お手入れしてあげますからね」 そう言ってニッコリ笑った玲香ちゃんの視線が鋭くて怖い。内心ビクついた俺の耳に一葉の呟きが聞こえた。 「やべ、玲ちゃんのスイッチ入ったよ」 スイッチって何だよ❗ 答えを求めて一葉を見たが、視線を逸らされる。 「じゃあ始めるよ暁くん。こっち向いて座って、これで前髪上げて」 「は、はい」 言われるままカチューシャで前髪を上げた俺の顔に、躊躇なくマッサージクリームが塗りつけられた。 それから、玲香ちゃんに顔を揉みほぐされる。女の子に接近され顔を触られるなんて初めてで驚いたし恥ずかしいし、身動きできずに固まっていたんだけれど、揉まれるうちに徐々に気持ちよくなって来た。 「眠い…」 「いいですよ、でもその前にシャツの首もとのボタン外しますね」 眠気に襲われ目を閉じかけた俺が最後に見たのは、焦った顔で走りよって来るユウリの姿だった。 図書委員会に参加するユウリとは今日の放課後は別行動だった。遅くなったからって、そんなに慌てなくてもいいんだよ。 ぼんやりした意識の中で、俺はそう声にしたつもりで、眠りの中に落ちて行った。

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